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その後のふたり2

♡♡♡  やはり私の予想どおり、長く療養することができなかったアンドレア様は、一ヶ月半でギブアップし、予定より早く永眠なさった。  期間が短くなった分だけ、私の仕事が究極に忙しくなり、とても大変だったのは言うまでもない。  その後、滞りなく葬儀を終えた足で、南方にある古城に向かう。アンドレア様の荷物を含めて、秘密裏に引越し済みだったゆえに、手提げ鞄ひとつのみ。 「カール様、遅いですよ。待ちくたびれました」  待ち合わせ場所に指定した公園の入口で、不機嫌顔のアンドレア様もとい、使用人のアンソニーが腰に手を当てながら私を睨む。  焦げ茶色の長い髪の下には、宝石のサファイアを思わせる瞳があり、目尻には泣きボクロがうまい具合につけられていた。 (正直なところ、貴族のオーラがこれでもかと出ていて、私の使用人にはまったく見えませんね) 「アンソニー、すみません。皆様、アンドレア様とのお別れが辛くて、なかなか人がはけなかったんです。それで葬儀が長引いてしまいました」 「カール様は専属執事だったもんな。最後までいなきゃ、誰かにあやしまれる」 「言葉遣い、もとに戻ってます」  目的地に向かうべく歩き出すと「ごめん、なかなか慣れなくて」なんて、反省の色を感じさせない口調で告げるなり、軽快な足取りで私の隣に並ぶ。 「なんせ、一ヶ月以上ぶりの外出が嬉しくてさ。しかも大好きなおまえが傍にいるだけで、喜びが倍増される」 「そうですか」  ぬるい声色で返答して、ハッとする。瞬間的にしまったと悟った。顔を歪ませて横を見たら、にちゃぁと表現したくなる、だらしない笑みを浮かべたアンドレア様が私を見つめる。 「カール様ってば、こんなところで僕を悦ばせて、外でいたすおつもりなんですかぁ?」 (外だというのに、腰を屈めて顔を寄せるなんて、本当にこの方は手に負えない) 「アンソニーいい加減にしなさい。そんなに近寄られたら、歩きにくいじゃないですか。人の目があるんですよ」 「人目がなかったらカール様は夜毎、僕を大胆に求めるからなぁ」  アンドレア様は近寄せていた顔をもとに戻し、散歩でもするようなのんびりした足取りで歩く。 「なにを言ってるんです。最初に夜這いしに来たのは、貴方だったでしょう」 「だけど僕が夜這いしようと思ったタイミングで、カール様が先に寝室に現れたのは、以心伝心だったよな」 (それは嫌な予感が的中しただけであって、私の部屋でいたさないようにしただけなのに。アンドレア様のおねだりの声が大きすぎて、隠れながらスるのに苦労した……)  アンドレア様の寝室から声が漏れたら、急病だと心配した誰かが入ってくる恐れがあるし、私の部屋だって何事かと思われること間違いなし。ゆえにそういう部屋を予め見繕い、そこにアンドレア様を連れ込んだだけ。  そしてふたりきりで逢っている間は、互いの立場を逆転させて、城の主と使用人の会話の練習をしていたのだけれど。 『カール様ぁ、もっと僕をなじってください』 『うわぁ、犯罪者でも見るような白い目でじっと見つめられたら、それだけでイっちゃうかもしれません♡』  などなど、アンドレア様は信じられないセリフのオンパレードを、興奮まじりに大声で言うものだから、本当にいろいろ大変だった。そのせいで変な戯言が夜な夜な聞こえると、使用人の間で噂になり、もみ消すのに苦労した。  リーシア様から、召使いを数名ほど派遣しましょうかと提案されたが、丁重にお断りしたのは、これが原因だった。

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