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it’s rubbing off on me(1)
「最近寒くない? それにめちゃくちゃ暗い」
「冬だからな」
放課後の委員会活動が終わって帰る頃にはもう、日がすっかり落ちていた。大通りに面している正門ではなく西門から出たせいもあり、通学路には俺たち以外に誰もいない。彼の冷たくなった指先に触れ、赤信号だったにも関わらず白線に向かって踏み出せば、軽く触れていただけの俺の手を突然強く掴まれた。
前に進もうとしていた体が引き戻され、うえっとみっともない声を発してしまう。慌てて口を押さえるも、彼はそんな俺の声よりも、俺の足が横断歩道の白線に触れていないかを確かめるほうが重要だったようで足元に視線を落としていた。
「車も来ていないし、人も歩いていないよ。自転車もいない」
「でも赤だろ?」
「そんなに気にすることかね」
「気にするも何もそれが当たり前じゃあないか」
黙った俺が何を思っているのかは考えもしないで、じっと赤信号を見つめている彼にため息がこぼれた。いつもそうだ。俺の考えていることは気にしないで、こういうことを気にしてばかり。
信号は必ず青になってから渡るし、ノートの字が斜めに上がっていれば消ゴムで消して真っ直ぐに書き直している。課題の締め切りは病気のときでさえ絶対に守るし、どんなに暇で眠気を誘う授業であってもピンとした姿勢で居眠りも全くしない。
けれど、それだけ「きちんと」しているのに、その「きちんと」が崩れるときがあるから面白い。
「なぁ、今日も俺の家に寄っていかない?」
さっきは軽く触れた彼の手にしっかりと指を絡めた。びくりと肩が震え、寒さとは別に耳の先がほんのり色付く。俺の問いかけには返事をせずに青になった途端に進みだした彼をまた歩道に引き戻すと、答えるまで進めないと分かったのか無言で小さく頷いた。でも絶対に手を振り払わない。もう、スイッチが入ってしまったから。
「親は……?」
「俺らが帰り着く頃には仕事から戻ってると思うよ」
「……っ」
「声、我慢してね」
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