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頼むから俺の話を聞いて(6)
抱えられたままの俺に、ペラペラ話していた天城がキスをした。ネクタイを引っ張られているから激しく抵抗できない。俺が手足をバタつかせたせいで真田がそのキスに気づき、足を後ろに上げて天城を蹴飛ばした。
「俺より先に栗谷にキスすんな」
「だって、前からずっとしたいなぁって思ってたし。今日の栗谷最高に可愛いんだもん。俺、栗谷には突っ込んでみたいかも。真田、終わったら貸してよ」
「待って、勝手に進めるな! そもそも今からセックスやることに俺は同意してないぞ! お前らが勝手に決めたことだろう? 本当無理だから、」
「じゃあもうお昼のパンいらないから、栗谷のお尻もらう」
「だからマジで無理だって、いったん落ち着いて俺の話ちゃんと聞いて」
「じゃあ栗谷犯してる天城のケツにぶち込んでやる」
「うはっ、絶対に最高に気持ちいいじゃんそれ……」
「栗谷は渡さねぇ」
俺の話は一切聞いてもらえず、進められていく話を終わらせることはできない。俺がどう抵抗したって真田一人にさえ勝てないのに、知野と天城まで加わったらもう無理だ。
今日で終わり? これからも続く?
どうしたって今日のこの出来事は俺の記憶からは消せないだろうし、後ろを経験してしまえば商業本もこれまで通り楽しめなくなってしまう。
どうしよう。漫画の通りになってしまったら。気持ち良くなって、思い出して疼いてきたら? 一人で触って、指を入れて、足りないって泣きながら自慰することになったら?
やめてくれよ……。ボーイズラブはファンタジーだろ? そこに俺の現実が混ざって壊されたくない。これまで大切にしてきた俺の趣味の世界が……。
「えっ何……。自ら経験することで、受けの気持ちに共感できるようになって作品を楽しめってこと……?」
それとも、甘々ほのぼのセックスより、ガンガン激しいセックスで受けが壊れそうなくらいに感じている方が好きだからってそればかり見ていたから神様が俺に試練を……?
「うぅ、どちらも望んでません……」
手を合わせてごめんなさいと見えない神様に謝罪したと同時に真田の足が止まり、ドアが開けられたのを背中で感じた俺は、 思いっきり目を閉じた。
「うぅ……」
無理矢理犯される時に攻めが助けにくるタイミングは直前ではなく最中派だけれど今日だけは直前で来て欲しい、と思ったところで俺にそんな恋人はいないしそもそも自分は受けではないと、怖いのに妄想がやめられない自分を可哀相だと惨めになった。
END
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