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好きになるのに理由がいるの?(3)
◇
「この章は一通り教え終わって、残りは見ての通り練習問題だから。隣の人とペアになって、前から順番に一問ずつ問題を解いて来い。明日ペアごとに前に出てきて目の前で解いてもらう。全員は回らないだろうから、ちょうど半分まででいい」
カシャンと中指で眼鏡を押し上げて、数学の岸先生は淡々とした声でそう言った。一つの単元を終えるごとに先生お手製の練習問題を解かされるのだけれど、それがまた難しく、数学が苦手な者からしたら悪夢でしかない。
前回はクラスの半数がクリアできなかったからか、一人ではなくペアにしてくれたことだけは、机に頭をつけてお礼を言いたいくらいに感謝したいと思った。
「あ……」
先生はそう言ったけれど、俺の隣の松島くんは今日、体調不良で学校を休んでいる。俺が当たるのは一番目の問題だから、どうしたって明日までにやらなければならないのに……。
本当なら松島くんは、とても数学が得意な子だから助けてもらえるだろうけれど、休んでいるから助けは求められないし、俺一人で頑張るしかないか。松島くんが明日学校に来る可能性も低いし、来たところで一限目にある数学の授業までに間に合うかも分からない。それに、体調不良の彼に連絡をして、一緒に解いて欲しいと頼むなんてことももちろんできない。
机の中から問題集を取り出した。もしかして、一問目なら大して難しい問題ではないかもしれない。
「……え、星が四つもある」
少しの期待を持ちながら開けば、一問目からいきなりレベルの高い問題で気持ちがさらにどんよりした。
問題のレベルが星で表されていて、一番難しいのは星が五つ。だからそれでないことは良かったけれど、一つ少ないからって数学が苦手な俺からすればどれも星五つのようなもの。一人で何とかできるのだろうか……。
同じクラスに一緒にこの問題を解いてくれるような、そこまで仲良しな友人はいないし、みんなそれぞれ自分が当たった問題を解くのに忙しいだろう。
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