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好きになるのに理由がいるの?(4)
あ、神井 がいる! と、二つ隣のクラスの友人の存在を思い出した。
去年同じクラスだった彼とは俺が勝手に思っているだけかもしれないけれど、わりと仲良くしていたし、真面目に授業を受けるようなタイプの人ではなかったものの、頭は間違いなく良いから。彼に聞けば教えてもらえるかもしれない。
次のホームルーム中にとりあえず自分で解けるところまでは挑戦して、残りを彼に助けてもらおう。
岸先生が続けて何かを話していたけれど、この問題とどう戦うかを必死に考えていた俺は「ではまた明日」という最後の言葉しか聞いていなかった。授業終わりを知らせるチャイムと同時に「ありがとうございました」と先生に毎回の決まった挨拶をし、理解するためにゆっくりと問題文を読み始める。
「……ん?」
一度読んだだけでは何を言っているのか全く分からず、だからと言って丁寧に読んだところで、それが自分の理解に繋がっているわけではないことに頭を抱えた。
そうして慌てる俺をよそに、担任の先生が来てホームルームを始める。これが終わってすぐに神井の教室へ行かなければ、彼は帰ってしまうかもしれない。いや、それ以前に、このままだとまっさらな状態で全てを神井に聞くことになってしまう。それだけは避けたい。
「奥原 」
「……っ、」
周りの雑音が何も耳に入らないくらいにぐるぐると考え込んで集中していたのに、自分の名前を呼ぶ声だけは、はっきりと聞こえた。俺の名前を呼んだその声が、大好きな彼の声だったから。
はっとして顔を上げれば、教卓に立っていた先生がいなくなっていた。代わりに視界に入ってきたのは滝くんで、勘違いでも何でもなく本当に彼に名前を呼ばれたのだと分かった。
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