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好きになるのに理由がいるの?(7)

 最初からできないと決めつけてさっさと解答を教えるのではなく、こうしてまずは俺が問題に向き合う時間を作って待ってくれているところもとても好きだ。全ては分からなくても、できるだけ自分の力でやれるところまではやりたい俺にとって、こうして尊重してくれるのはとてもありがたい。 「……あ、もしかして、こういうこと?」  「そうそう、そのまま進めて」  何となく分かった気がして、式を立ててみると、彼が大きく頷いてくれた。  色々なことでぐちゃぐちゃになっていた気持ちも、今は彼とのこの時間に集中でき始めたように思う。それが何だかとても楽しく、さらさらとシャーペンを動かした。  「そこまで求められたら、あと少し。板書ノートの次のページを開いて。さっき見た問題に、これが合わせられてるんだよ。だからややこしいの」 「あ……! なるほど!」  言われてみると、意外に単純な問題だった。ぽかんとする俺を、彼が笑う。 「岸先生はかなり意地悪だから文章も難しく書くし、余計に分からなくなるよな」 「滝くん、すごいね。俺一人じゃあこれは無理だもの」    「そう? まぁ奥原に良いとこ見せたかったし、すごいと思ってもらえたなら、俺としては今日はラッキーだったな」 「……え?」 「ん?」 「……ううん、何でもない。残り、ちょっと解いてみる」  何かとんでもないことを言われたような気がして聞き返したけれど、彼は特に変わった様子もないし、大した意味はなかったのかと落ち込んだ。  いや、落ち込むなんて何様だよって話か。意味を持たせようとしたこと自体が、そもそも図々しいのだから。  これを解き終えたら、彼とのこの時間も終わって、明日からはまたそれまでと同じで、全く話をしない関係に戻ってしまうのだろう。浮かれるだけ悲しみが増える。  

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