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好きになるのに理由がいるの?(8)

 今日は特別な日で、またお互いの隣が休みになるとか、そういうことが起きない限りは、話すことはほとんどなくなるに決まっている。シャーペンを動かしながら、残り数行で答えが出るというところで、少しだけ顔を上げて彼を盗み見た。見ている俺に気づくことはなく、真剣に携帯の画面を見ている。  何か急用でも入ったのだろうか。それならば早くこの問題を解いて彼が早く帰られるようにしないと、とそう意気込んで一気に答えを出し切ったところで、思い出してしまった。 「滝くん、解き終わったよ。……時間かかっちゃってごめんなさい」 「解けた? 答えは……っと、俺が出したやつと同じだ」 「良かった……。あの、携帯見てたけど、時間大丈夫? か、彼女さんから、とか……その……」  噂を聞いて、それが事実だと思い知らされたその日から、しばらく眠れないほどに悩まされたから。奥深くに押し込めて考えないようにしていたけれど、彼と話ができたとかできないとかでぐるぐると考えたところで、俺のこの恋が実るわけではないのだ。 「彼女? いないよ。もしかして、女子たちの噂、聞いた?」 「うん……」 「まぁ、好きな子はいるのは本当だけど、まだ付き合えてないし。って、そもそも告白できるスタートラインにさえ立てていないし」 「……そう、なんだ」  数分前の自分を殴りたい気持ちになった。噂が本当なのか確かめたい気持ちが多少あったから、「彼女」だなんて言葉を口に出してしまったのだろうけれど、そんなバカなことを言ってしまわないように、過去に戻って口を塞いでやりたい。自分で首を締めてしまった。 「……奥原、あのさ。今まで俺に良いイメージなかっただろうし、あの時の日直の仕事もお前に全部投げたしでとにかく最悪だっただろうけど、今日……少しでもそのイメージを変えてもらえたら、嬉しい。……奥原と、仲良くなりたい」 「え……?」  彼が何を言ったのか整理し終える前に、さっきまで見ていた携帯を俺の前に突き出してきた。 「アドレス、教えて」 「え……」 「……ダメ?」 「ダメじゃあないよ、……ダメなわけない、」

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