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好きになるのに理由がいるの?(10)
◇
月が変わり、再び席替えの時間がやってきた。もう一度彼の隣の席に……という俺の願いは叶うことはなく、これまでと変わらないくらい離れた席になってしまった。彼が真ん中の列の前から二番目、俺は前に彼がいた席に。
机を運び移動する中、すれ違った彼に「隣じゃあなかったな」と残念そうに言われ、前回の席替えの時とは違うこの関係に唇を噛みしめた。気にかけてもらえるだけでありがたい。それに彼のいた席からは彼が見ていた景色が見えるし、何より俺が後ろだということは、彼の背中を見放題ということだ。前の席に比べれば、十分良いように思えた。
あの時に連絡先を交換をしてからずっと、週に数回たわいのないやり取りをしている。
話のきっかけを上手に作れない俺からすることはほとんどなく、彼から送られてくるメールにどのように返したら良いのかを考えてばかりだけれど、最後に「おやすみ。また明日」と当たり前のように文字を打って送れることが嬉しくて、そういう日は布団の中でにやけが止まらずいつも寝不足だ。
教室では大きく絡むことはないけれど、目が合えば笑いかけてくれるし、帰りも時々一緒に帰っている。
しばらく経った今でも、彼の好きな人は一体誰なのだろうかと女の子たちが噂しているけれど、俺と帰らない日も特定の女の子と帰っているわけでもないし、教室の中では前と違って一定の距離を保って関わるようにしているから、結局真相は分からないままだ。
彼は告白するスタートラインにまだ立てていないと言っていたから、そこに立てるようになるまで、好きな人はきっと誰にも分かりっこないのだろう。
毎日違う子といた彼とは最近は別人みたいで、余程その子のことが好きなんだなぁと、日々現実を突きつけられている。
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