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好きになるのに理由がいるの?(11)
けれど、彼に好きな人がいようがいまいが、恋愛対象になれない俺には関係のないことなのだ。
ぐだぐだ悩まないで、彼を好きだという気持ちを大切にしようと思えてきた。友人としては仲良くなれたのだから、一方的なベクトルではないはず。
俺にとってはそれだけで十分な進歩で、もうこれでいいだろうと満足している自分もいる。これ以上何を望むことがあるだろうか。
「奥原くん……! 呼ばれてるよ!」
ぼんやりと窓の外を眺めていたら、クラスの女の子に話しかけられた。わざわざ人づてに呼ぶということは他のクラスの人なのだろう。誰だ? と考えながらドアの方へ向かえば、長らく会っていない神井 だった。
少しだけ身長が伸びた気がする。気だるそうだった表情も少しマシになったし、前髪も整えられていて爽やかだ。
「久しぶり。クラスもそこまで離れてないのに、全然会わないな」
「わざわざ会いに行こうとも思わないしね」
「奥原お前……」
「いや、良い意味だよ! ほら、久しぶりに会っても神井となら毎日会っているかのようなテンションで話せるし、頑張って作らなくてもそういう関係っていいよなぁって」
言葉が足りなかったと謝ると、神井は目を細めた。
「本当か? まぁいいや。国語の教科書、貸して」
「いきなり本題に入るのやめよう……。まぁいいやって、あっさり終わらせないでよ」
「ごめんごめん」
俺の言葉が気に入らなくて仕返しをしているのか? と、そう疑いたくなるほどの適当な返事に今度は俺が目を細めた。
「ごめんって思ってないくせに。……ってか珍しいね。教科書忘れても気にせずそのまま受けるタイプだったのに」
「いや、俺もそれでいいと思っていたんだけど、今日は当てられそうな予感がして、とりあえず借りておいたほうがいいかなぁって」
「予知能力? ……や、そんな大したもの神井が持っているわけないか。いいよ、持ってくるから待ってて」
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