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好きになるのに理由がいるの?(13)
「今度、お前に紹介してやるよ。だからお前も、そうやってよく笑うようにしてくれた相手を、俺に紹介しろよ」
「……え?」
「じゃあまたゆっくり話そうぜ! って、後で教科書返しに来るからまた会うか」
「……あ、うん」
しばらく会わないかのような気持ちになっていたけれど、教科書返してもらわなければ俺が困るし、また今日すぐ会うのに何をしているのかと面白くて笑ってしまった。
でも、神井の言葉にドキリとするところがあって、俺は両手で頬を包み込んだ。そんなにも顔に出ているのだろうか。
俺に何か変化が見られるのならそれは間違いなく滝くんのせいであって、彼とここ最近行動を共にすることが増えているというのに、あからさまに顔に出てしまっているのならそれはとても大変なこと。
気をつけないと、せっかく友人になることができたのに。
俺は、重たい足取りでとぼとぼと席へ戻った。
◇
「奥原、今日は一緒に帰ろう」
「あ、うん……。でもちょっと待ってもらってもいいかな? 神井が来ると思うから」
「神井?」
「うん。去年一緒のクラスだった子で、さっき教科書貸したんだよ」
「……あぁ」
俺の席までわざわざ来てくれた滝くんにそういうと、残りの教材を鞄に詰め込んだ。
神井に言われるまでは意識していなかったけれど、思い返してみればこうして彼が俺の元へ来てくれる度に、にこにこと誰が見ても嬉しそうな顔をしていたかもしれない。
表情の緩みを気にしていなかったから、緩んだままで彼を見ていた可能性は十分にある。
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