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好きになるのに理由がいるの?(14)

 目は少し垂れ目で、でも眉はつり眉。鼻筋はすーっとしていて、薄い唇。かっこよさと少しの可愛さを兼ね備えていて、すごくモテそうな顔だと思う。そんな彼がこうして目の前にいれば、たいていの人はドキドキしてしまうのではないだろうか。彼に対する女の子の態度を見ていてもそれは言えることだ。  それでも普段は表情が分かりにくいと言われる俺だから、以前の彼と友人ですらなかった時であれば冷静にいられたかもしれないけれど、今は友人にレベルアップしたわけでこれまでとは違うのだ。意識しておかなければ、このままだと教科書を返しにきた神井にはバレてしまうだろう。 「奥原」 「いてっ」  突然頭を何かで叩かれた。誰が何を……と悩んだのは一瞬で、返しに来た教科書で神井が叩いたのだとすぐに分かった。借りに来た時は教室内に入って来なかったのに、放課後の人が少ない時間であれば我が物顔で他の教室に入ってくるのか。 「返しに来た人のすることじゃあないよね……」  叩かれたところをさすりながら見上げれば、神井の横には知らない子が立っていた。襟のところにあるバッジの色で同じ学年だと分かったものの初めて見る顔だ。神井の背中に隠れて、そこからひょこりと顔を出して俺を見ているけれど、人懐っこそうな顔をしている。黒髪の癖っ毛で目はぱっちりとしていて、男にしては可愛らしい。 「教科書ありがとう。コイツはさっき言ってた奴。じゃあ俺帰るわ」 「や、ちょっと待ってよ……!」  相変わらず、適当な神井に戸惑いながら引き留めようとしたけれどあっさりと帰ってしまった。今度って自分が言ったくせに、今日、そしてこのタイミングで紹介するの? そういう人って、俺の考えているそういう人と同じ認識だよな? 色々聞かなければならないことがこの数十秒でたくさんあったぞ。 

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