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好きになるのに理由がいるの?(16)

 神井のは癖みたいなもの……、いや、それが癖だというのもおかしな話だけれど、あれはまたこれとは別物に分類されるから。 「……嬉しそうに見えたんだよ。奥原がそれをされてた時」 「ん……?」 「何か悔しかった。や、これもいきなり何を言ってるんだって話になるけどさ」  俺を見ることも、いつものように俺の歩幅に合わせてくれることもなく、スタスタと急ぐように先を歩いて行く。  階段も最後三段飛ばしで下りて行き、靴もすぐ履き替えて駐輪場へと歩き出す。  いつも靴の履き替えで戸惑う俺は完全に置いて行かれて、目の前から消えてしまった彼の背中へと追いつくために駐輪場へと急いだ。 「滝くん!」  コンクリートで覆われて、電灯の明かりもなくほんのり薄暗い駐輪場に、俺の足音と彼の名前を呼ぶ声が響く。  さすがに俺がここに来るまでに自転車に乗って先に帰るほどの差はなかったし、一緒に帰ろう、寄りたいところがあると向こうから誘って来て置いていくことはしないだろう。  それでも、彼の姿が見当たらない。 「滝くん……! 滝くん、どこ……?」  キョロキョロと見渡していた時、彼の自転車を見つけた。  やっぱりここのどこかにいる、とそう確信した時、後ろから腕を引っ張られ、人が通ることもないような細い通路へと連れ込まれた。  突然のことで怖かったけれど、背中から包み込むようにして抱きしめられたその匂いで彼だと分かり、二重の意味で安堵する。 「……俺、早く奥原ともっと仲良くなりたいな」 「もっと、仲良く……?」 「なぁ、奥原……。初めて席が隣になった時に比べたら、俺のイメージは少しでも良くなった?」 「え?」

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