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好きになるのに理由がいるの?(17)

 耳元で囁かれるその声が、彼の悲しさを伝えてくる。どうしてそんなことをそんな声で聞くんだ?   そうして混乱する頭は、包まれた彼の体温でさらに機能しなくなる。このままだとパンクしてしまうんじゃあないかとそう思った時、もう一度「イメージ変わった?」とそう聞かれた。  首もとへと回された手に、そっと指先で触れ、どう返事をすることがベストなのか分からないけれど、俺は思ったことをそのまま口にした。 「元々、滝くんに悪いイメージなんか持ってなかったよ……」  好きだと言うのに、どうして俺が彼に対して悪いイメージを持つのだろう。  最初の態度のことを気にしていたけれど、それだって俺は、話しかけられて嬉しかったのに。 「……そうなの? じゃあ俺、スタートラインに立てたってことでいいのか?」 「え?」  スタートライン。その言葉に息が止まった。  だってその言葉は彼が、好きな子に告白したいけれどそもそもスタートラインにさえ立てていないと、その時でしか出していないものだ。   俺が何のことか知っている堤で聞くということは……待って、今、何が起きているの? 「奥原、俺……」 「……っ」  ドッドッドッと激しく動く心音が耳に響き、自分の心臓の音なのに何か別物のようで、支配されていくその感覚に手足が震えた。  続けられた二文字の言葉は耳から全身へと伝わり、ゆっくりと心の奥深くまで染みていく。 「何で……」 「好きになってしまったんだ」 「……っ」 「好きになるのに、理由は必要……? 奥原の笑顔が見たい。俺に興味を持って欲しい。気づいた時にはもう止まらなくなっていたんだ」  彼のその言葉に涙が溢れた。好きになるのに理由が必要かって、そんなはずない。俺だって同じなのだから。

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