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好きになるのに理由がいるの?(18)

「……夢?」 「ううん、違うよ。覚めたら消えるじゃん。俺の気持ち、消さないでよ」 「だって、夢は願望だって、」 「願望?」 「俺、ずっと滝くんのこと……」  込み上げる想いに、自分ではどうすることもできない涙が溢れ出す。  彼の前でみっともないと分かっているのに止めることができず、ひうっ、と変な声が漏れる。言葉は続けられなかったけれど、彼は分かってくれたようで、穏やかな顔で微笑んでくれた。それにまた涙が溢れる。 「……誰か来た」  彼のその声に、ここに二人でいるところを見られてはいけないと、咄嗟に口を押さえた。  駐輪場内には女の子の複数の話し声と足音がする。息が詰まるほど制服を押しつけ、少しでも漏れないようにとつらいのを我慢していると、そんな俺に対して彼はその手を掴み、口元から無理矢理離した。 「……ンッ」  すぐ目の前にある彼の顔。俺の手を掴む彼の手がかすかに震えていて、緊張が伝わる。  その手から徐々に唇への熱に意識が向き始め、キスをされていると分かった途端、あれだけ止まらなかった涙がぴたりと止まった。唇の境目を舐められ、上唇をはむりと挟まれる。 「バレちゃう……」 「奥原の涙は止まったし、もうバレないよ」 「でも……」 「我慢できない、キスだけだから」 「……んぅ、」  もう何も聞かないと、キスでそう示されているようだ。声が漏れるかもしれないとその心配もさせないくらいに深いキスをされ、吐息も全て飲み込まれていく。  彼が、こんなにも強引な人だとは思わなかった。 「滝くん……」  好きになるのに理由はいらないのだ。これからも毎日、こうして新たな彼の一面に恋をしていくのだろう。 END

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