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好きになるのに理由がいるの?(おまけ2)
教えてもらったその日、家に帰って何度もその歌手の曲を聴いた。曖昧な表現で綴られたその歌詞のはっきりとした意味は分からなかったけれど、何となく奥原がその曲を好きな理由が分かった気がした。
優しい世界で、そういうものが好きな奥原だから、俺に対してもあんな態度を取ったのかもしれない。だったら俺も、奥原に対して優しくありたいと思った。
けど優しくなんてそうそうできないから、とりあえずきっかけが欲しくて、奥原が好きそうな歌を調べた俺は次の休みの日にCDショップに走った。
何かに一生懸命になったことが初めてで、それが奥原だなんてどうかしていると思ったけれど、買ったCDを見て、今はぼんやりとしたその気持ちを確かめることはどうでも良くなった。
「お前、こういう曲も好きそうだと思って」
そう言って強引に渡したそのCDを受け取った奥原を見て、ぼんやりとしていたものが確信に変わった。
「好きになるのに理由がいるの?」なんて言葉をバカにしていた俺だけれど、確信に変わったその気持ちの根拠は自分でも分からなかったから、理由なんていらないと身を持って知らされた。
こんなこともあるのだと、だとしたらこれが運命では? と、一人ワクワクし始めて、誰かを好きになることはこんなにも楽しいことなのだと、頬を緩ませた。
次はどんな話をしようか、またCDを押しつけようか、とそんなことを考えている中、席替えで奥原と離されてしまった。
けれど、それは大きなチャンスのように思えた。今まで良いイメージを持ってもらえなかっただろうから、次に話すときまでにはそれを少しでも変えてもらえるようにしなければと、気持ちが固まった。
そうして次に何かきっかけができたらその時は、大きく一歩踏み込むんだ。
奥原のおかげで学校生活が楽しくなった。だからこれからは、奥原と学校生活を楽しみたいな。
END
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