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君がいい。君しかいらない。(1)

 中学に上がり、クラスメートが異性をそれまでよりも強く意識するようになった中、目を奪われたのは隣の席の可愛らしい女子ではなく、前の席に座っていた俺より身長が高くて体格の良い男子だった。  髪も短く切りそろえられており、見た目でも絶対に女子と間違いようのない相手で。そういえば、と過去に女子に対して恋愛感情を抱いた記憶のなかったことに気づいた俺は、その時になって自分が他の人とは違うことを知った。  自分ではそれが自分なのだと素直に受け止められたけれど、周りがそれを許してくれるような世界ではないから、人前では自分を押し殺して無理に周囲と歩幅を合わせてきた。  それでも、男子数人で集まってゲームをする時間も、好きだったその子が隣に座っていれば、その時間は俺にとってはデートの時間になった。くすぐったい気持ちを抱え、一人で幸せを噛みしめる。勝手に特別に想っていることが苦しくもあったけれど、密かにその時間を愛おしく感じていた。  学年が上がった後もその男子とは交流があり仲良くしていたけれど、ある日、隣に俺の居場所はなくなっていて、代わりに可愛く小柄な女の子が立つようになってしまった。  俺も身長は低いけれど、それは男子の中で見ればの話であって、女子と比較するとそこそこはある。その彼女のように抱きしめても柔らかくもないだろうし、鈴の音のようなきれいな声も出ない。手を口元に当てて上品に笑うこともできないし、ひらひらのスカートだって似合わない。自分はどうしたって彼の横にそういう意味で立てることはできないのだと、その時に強く思い知らされた。  ネットで同じ境遇の子と度々話をしていたけれど、その子は自分がゲイであるとクラスメートにバレてしまい、居場所がなくなったと言っていた。自分の好きになった人が自分を好きになってくれないということだけでも十分つらいのに、好きになるその気持ちさえも否定されてしまうのなら、 もう誰かに対しての感情を温めることはやめようと、そう決めた。

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