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君がいい。君しかいらない。(2)
高校に入ってもそれは変わらず、恋愛をしたり、自身の性的指向について誰かに話すことなどないまま今日まで過ごしていたけれど、放課後ぶらりと電車に乗って出かけた先で、男の人に路地裏に連れ込まれてしまった。見た目がどちらかと言うと女の子寄りということもあって、可愛いと言われることが多い俺だから、ゲイの中でも対象として見られることは少ないと思っていたのに、ごくまれに話しかけられることがある。
自身と同類であればノンケを好きになる不毛な恋をせずに済むけれど、全く知らない相手と体を重ねることは気持ち悪いという意識があったから。そういう目的で声をかけてきた人は全て断ってきたし、容姿のわりに力があるから、何かされそうになっても無傷で逃げられていた俺は、これまで大きな問題に巻き込まれることはなかった。
だから今日だって、声をかけられたけれど丁寧に断ったんだ。それなのに余程気に入らなかったのか、腕を強引に掴まれて路地裏へと引き込まれた。身動きが取れないように壁に押し付けられ腕の中へと閉じこめられる。それでも、最悪アソコを蹴り上げて逃げれば大丈夫だと、その状況でも冷静に頭を働かせタイミングを見計らっていた時「こうされることを望んでいたんだろう」と耳元で囁かれた言葉に無性に腹が立ってきた。
「何を根拠に」
「ここって実はそういう人が集まりやすいって知らなかった?」
「は? そんなの知らない」
「でもお前、ゲイだろう? 俺の勘がそう言ってる」
「……っ、」
こんな状況でも、ゲイじゃあないと否定はしたくなくて、何も言えずに黙り込んだ俺を目の前の男が笑う。
同類で年上の人には、俺がゲイだとそう確信できる何かが見えているのだろうか。だから、頻度は少ないにしても話しかけられてしまうのだろうか。
「ゲイだったら男に抱かれても痛くも痒くもないよな? 減るもんじゃあないし、ケツくらい貸してくれよ」
「……っは、」
頭に血が上った。違う。コイツは同類なんかじゃあない。女に飽きたから男にも手を出してみようかって、面白半分で声をかけてきただけだ。
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