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君がいい。君しかいらない。(7)

   十五分くらい歩いたところで神井の家に着いた。その時間は親が仕事で家に誰もいないと聞いて、さっきまでは「せっかくなら遊びに行くか」の方に傾いていた気持ちが、また「行きたくない」の方に変わる。もう目の前には玄関があるのに。  ガチャリとドアを開けて一歩中へ踏み入れた神井の手を掴んだ。 「……俺がゲイだって分かっていて、誰もいないこの家に上げるのは怖くないの?」  ここまで来て今さら何を、という顔で俺を見ると、神井は一つため息をこぼした。 「何でそんなこと言うの? それにどうして類は自分が俺に何かする前提で話すわけ? 俺がお前を襲うとは考えないの?」 「え?」  俺が掴んでいたはずの手がいつの間にか神井に掴まれていて、強引に中にへと引きずり込まれる。逃げようとしたものの、閉められたドアに背中がぶつかり、さっきの路地裏と同じように追いつめられてしまった。 「ゲイ云々以前に俺だって男だし、いくらお前が強いからって、俺はお前のこと簡単に組み敷けるぜ」 「な……!」 「人の心配する前に自分の心配をしなよ。もっと自分を大切にしたほうがいい。ゲイなのにって、いちいち自分で自分を枠の外に出すのはやめろ」  そう言うと神井は、驚かせて悪かったなと謝り、俺の手を引いた。まだバクバク動いている心臓に意識を取られたまま靴を脱ぎ、部屋へと上がる。 「コーヒー? 紅茶? それともお子さまにはオレンジジュース?」 「ば、か……にすんなよ」 「ん?」 「……オレンジジュース、がいい」  その中ならオレンジジュースがいいと思ったけれど、お茶とか水がいいって答えれば良かったんだ。何もその中から選ぶ必要はないのだから。返事を間違ってしまったと後悔したものの、今さらどうしようもない。きっと俺をまたバカにしながら神井は目の前でコーヒーでも飲むのだろう。 「え? 神井もオレンジジュース?」  てっきりコーヒーかと思っていたのに、神井はオレンジジュースの入ったコップを二つ持ってきた。キョトンとする俺を鼻で笑う。 「お前がオレンジジュースなら、俺もそうした方が準備が楽だろ」  「あ……、そっか」 「神井もお子さまじゃんって思ったな?」 「う、」  

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