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君がいい。君しかいらない。(9)

「あ、そういえば。類、今日は俺の家に来る?」 「あー、ごめん。今日は用事があるから行けない」  あの日、神井の家に遊びに行ってからこれまで、何度も彼の家に遊びに行っているし、神井も俺の家に遊びに来ている。何も隠すことなく付き合えるのは居心地が良いし、何か目的があるわけでもないのに遊びに行って、話もせずにただぼんやりと隣でテレビを見る時間があっても、それも全然苦にならない。  楽しいとはまた違うけれど、自分の居場所を見つけたような安心感が何となくあった。……それだけなら良かったのだけれど。 「じゃあ明日は?」 「明日は……分かんないや。明日にならないと」 「類、最近そればっかりじゃん」 「ごめん……」  最近は、神井の誘いを断ることが多くなった。このまま一緒にいる時間が増えれば増えるほど、この関係が崩れてしまう可能性が大きくなる。いや、俺が崩してしまうの間違いか。  どうしたって恋愛対象は男でしかなくて、それは叶わないし否定されて当然のものでしかないから、もう誰も好きにならないと決めていたけれど。神井とたくさんの時間を過ごす中で、そう決めたことが守れなくなってしまうような気がし始めた。  俺がゲイだと知っているのに、それは関係ないと言ってこうして関わってくれていて、特別な人のように思ってしまっているだけかもしれないと考えていた時期もあったものの、バカと言われる俺でもその感情を勘違いするまでバカではない。これが大きくなってしまったら、友人として見ることができなくなる。足りなくて、神井のことをそういう意味で求めてしまうようになるだろう。  そうしたら神井はもう「 お前がゲイだろうとそうでなかろうと俺には関係ないから」とは思えないはず。自分が恋愛対象になってしまったら、「関係ない」とは言えないに決まっている。    嫌われるのは嫌だ。  神井が俺を大切な友人だと思ってくれているのは分かっているし、俺も神井のことは友人としてもとても大切だ。だからまた友人として見られるようになるまでは距離を置いた方がお互いのためにいいと思うんだ。せっかく俺に興味を持ってくれて、こうして関係を築けてきたのに。それを俺の一方的な想いで崩したくはないから。

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