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君がいい。君しかいらない。(12)
◇
「え?」
「話がしたくて待ってた」
思っていたよりも委員会活動が長引いてしまった。外が真っ暗になる前に帰りたいと急いで教室に戻れば、誰もいないと思っていたそこに神井がいた。驚きから力が抜け、手に持っていたプリントと筆箱の中身が床に散らばった。
「あ……」
慌ててしゃがみ込み拾う俺の元へ、ゆっくりと神井が近づいてくる。いつもとは違う彼の雰囲気に動揺し、何度やってもプリントが拾えない。
「類」
「……っ」
視界に神井の足が入ってきたと思ったら、俺の目の前で神井もしゃがんだ。拾おうとしていたプリントを神井が全部集めてくれ、まとめて机の上に置いてくれた。ありがとうと言ってそれに手を伸ばすと、その手を掴まれ胸に引き寄せられる。
「神井っ」
咄嗟に反応して抵抗してみせるも、抱きしめている反対の手で俺の後ろのドアを閉めた神井に、今度はドアへと押し付けられた。ガタンと大きな音がする。委員会活動を終えて一緒に戻ってきた奴らが隣の教室にいるのに、とそれを気にする間も与えられないほど強引に押し付けられ、神井のことしか考えられなくなる。
「抵抗しても無駄だせ。言ったよな? 俺、お前より力があるから簡単に組み敷けるって。押し倒すのは、こうしてドアに押さえつけるより簡単にやれる」
「……っ」
「って、別に類を脅かしたいわけじゃあないから」
抵抗するのをやめると、神井も押さえつけるのをやめた。そうしてまた俺の頭に触れる。気持ちの糸が緩んだのか、我慢しなければと考える前に涙が溢れ出した。
「怖がらせたな。ごめん」
再び胸に引き寄せ、神井は両手で力強く抱きしめた。その温もりのせいでどうしたって涙を止められなくなり、彼の制服のシャツが汚れてしまうと思いながらもその胸に顔を埋める。
「違ったら相当恥ずかしいこと言ってもいい?」
神井は優しくそう囁くと、抱きしめる力をまた強くした。
「類さ、俺のこと好きになった? だから、しばらくって言って距離を取るようになったんじゃ?」
「……っ」
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