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君がいい。君しかいらない。(13)

 ……バレていた?   そう思った途端、全身が震えだした。手や足の指先も、顎も唇も。呼吸の仕方が分からなくなり、口は開いているのに苦しくてたまらない。 「類……。息、吸って」 「ひ、ぅ、」 「吸ったら吐き出して、また吸って」  ガクガクと震えている俺の背中を、神井が一定のリズムで叩く。ドッドッドっとはっきりと聞こえる鼓動の音が耳を支配し、それにまた気持ち悪くなるも、背中を叩かれるタイミングに合わせて言われた通りに息を吸って、吐いてを繰り返しているとだいぶ落ち着いてきた。 「類が俺を好きでしばらくの間待っててって言ったんだったら、前も言ったけれどそれは本当に余計なことだよ」 「……っ、」 「他人に興味がないと言ってた俺が、お前に距離を置かれてもずっと関わりを求めていただろ。類だけが特別だからだよ」  神井の心音が大きくなる。無駄な嘘はつかないと分かっているから、その言葉が嘘だとは思わないけれど、でも、どういう意味なのかは分からない。俺の気持ちを知っているから同情してくれているのだろうか。 「なぁ、類。俺の勘違いじゃあなかったら、背中に手回してよ」  回したいのに、回すことができない。勘違いじゃあないと認めてしまったら、神井は困らないのだろうか。俺が違うと否定すれば、神井だってその同情で言った言葉をなかったことにできるのに。俺が手を回したらもう……。  考えれば考えるほど、分からないことが増えていく。 「何で回さないんだよ。俺の勘違い? 類は俺のこと好きなんじゃあないの?」 「……っ、」  「……本当に違う? だったら俺のこと突き飛ばせよ。さっきみたいに類のこと強く押さえつけていないんだし、簡単に抵抗できるだろ……! 嫌だって、拒否してみろよ」   神井の言葉に頭がいっぱいになって、俺は彼を突き飛ばした。バカだと、小さい頭で考えるなと、そう言うくせに、俺が考えても分からないようなことを言わないでよ。   突き飛ばした後、握りしめた手で肩を殴った。叩くなんて可愛いものじゃあない。鈍い音がするくらい、何度も殴った。

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