「しばらく待ってくれたら、無理矢理にでもどうにかして、それでまた神井と仲良くしたいって、そう思ってた！」 　そうすることができたらそれが一番良いって、俺なりに考えていたんだ。好きになってしまった俺が全部悪いんだから、神井に迷惑をかけられないし、ずっと友人でいられるようにって。　 「それなのにどうして、神井が折れるの？　俺の気持ちを知っていて、どうしてそう言うの？　優しさでそんなことを言ってしまったら後悔する！」 「類っ」 「俺の好きって気持ちは、ゲイだけど、みんなと一緒なんだ！　手を繋ぎたい、キスしたい、それ以上のことだって……！　そんな目で神井を見てるんだ。好きって、そういうことなんだよ」 　感情の暴走が止まらない。こんなことを言われたって困らせるだけなのに、全部自分が悪いのに、せっかくゲイでも仲良くしてくれている神井に対して酷い仕打ちじゃあないか。唯一親友と呼べるくらい大切な彼に、愛情なんていう迷惑なものを持ってしまったから。 　でも、それでも、簡単に受け入れないで欲しかった。同情で受け入れてもらえるほど、そんな単純なものじゃあないんだ。 「さっきから聞いてれば……、お前何言ってんの？　俺がお前の気持ちを知っていて同情でああ言ったとでも？　ふざけるのもいい加減にしろよ」 「……っ、」 　何度も殴っていると、神井にその手を掴まれた。さすがに今度こそ本気で組み敷かれ殴られるだろうとそう覚悟したのに、神井は押し倒しただけで殴ることはしなかった。 「否定するか、そうしないかは相手が決めるんだ。もし女が告白してきたって、それが俺の好きな奴でも好みの奴でもなければ断るよ！　類の好意だって同じだ。お前のこと好きでも好みでもなければ、同じ気持ちは返せない。当たり前のことだろう？　特別に思うのは、心からお前が好きだからだよ」 　神井が、顔をしかめ、まるで涙を堪えているかのような表情を浮かべている。血が滲みそうなくらいに下唇を噛みしめ、床を一発殴った。 「誰かに対して抱く好きの感情は、自分にとっては大切に温めてきた愛おしい気持ちだろう？　必ずしも相手に受け入れられるものではないだろうけれど、俺のこの気持ちは俺のものだ。それをお前が勝手に否定するな。決めつけるなよ！　お前の気持ちだって同じだ。勝手に迷惑だと思い込んで、傷つけるのはやめろ」