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触れられる理由をちょうだい①(5)

 膝までは下げられているズボンに、染みのできている下着。思いっきり触れば良かったものを、布越しに中途半端に触っただけなのだろう、起きあがったままだ。全くこれをどうするつもりだったのか。 「普段はオナニーやらないんですか? ってかそれなりの歳で経験だってあるだろうし、今さら自分の勃ったソレで驚くの?」 「やらない、わけじゃ……」 「だったら早く楽になったほうがいいって」 「ち、痴漢されて、勃ってしまったこれを、そう簡単に処理できるわけない……! 気持ち悪いし、それに君に見られたわけで、ここで抜いて、それで治まったとしてもどんな顔をして、また君の前に戻ればいいんだよ……。恥ずかしくて、情けなくてたまらない……!」  隠すところは隠さないで、顔だけ覆うその男性に何とも言えない感情が湧く。年上の男性に可愛いだなんて、この状況で頭がおかしくなったのだろうか。 「俺だって恥ずかしいですよ。知らない人の勃ったちんこ見てるんだから。でも仕方ないじゃあないですか。あんたを今ここに置いてはいけないし、置いて行けって言われて置いて行ったりなんかしたら俺はずっとあんたを気にしてしまうだろうし、明日の電車の中であんたを探しちゃうかもしれない。できるならこれっきりにしたいでしょう?」 「それは、そうだけど……」 「だったら早く抜いてしまおうよ。さすがにあと数分したら電車も来るはず。会社に遅刻はヤバいでしょ? 俺も遅刻したくない」  狭い室内にトイレ独特の臭い。はっきり言って居心地は良くなく、とりあえず早くどうにかしてしまいたい。この男性に対して嫌悪感は湧かないし、ためらうことなく触れられる気がした。 「触りますね」 「うっ、」  下着越しに触って染みを大きくしてしまえば、新しい下着が必要になる。それは困るだろうと、俺は震える男性の下着を一気に下ろした。  形の良いペニスがぶるりと顔を出す。男性は悲鳴に近い声を漏らし、頭を抱えた。座り込みそうになるその体を支え、優しくそれを握った。 「うっ、ああ、」  少し強めに握り、親指と人差し指で作った輪を上下させながらカリを刺激すると、すぐに達してしまった。  ずっと我慢していて限界だったのだろう、あまりにも早い射精で、それにまた男性がボロボロと泣き出した。顔を見られたくないのか俺の胸に埋めているせいで、服が涙でじんわり濡れていく。  苦笑しながらも、気持ちは理解できるし俺も悪いことをしたから、罪悪感から頭を撫でた。 「うっ……」 「なんか俺のほうが痴漢より確実に変態なことしてるね。ごめんね」

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