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頼むから俺の話を聞いて(1)
「栗谷 ~! 今日って俺の誕生日なの。何かプレゼントちょうだいよ」
「え? まじで? そういうのもっと早く言えよ。何も用意してないんだけど。……うーん、じゃあお昼のパン奢ってやるわ」
「やった。食費浮いた!」
男子校でただでさえ騒がしい教室だというのに、俺の友人である天城 が自身の誕生日で騒いでいた。
前の席に座っている俺に可愛くおねだりをし、隣の席の真田 にも同じことを言っている。
そう言えば今日ってお金持って来てたっけ? と不安になり確認すれば千円札が一枚だけ入っていた。ホッとしつつ天城と真田を見れば、真田からは飲み物を奢ってもらうことにしたようだった。
「真田~。飲み物とあと、お前の身長をちょうだい」
「バカかお前。やれるわけねぇだろ。牛乳飲んで伸ばせ」
「牛乳嫌い~。やだ~」
「我が儘言うな」
子どものように拗ねる天城を見て本当に今日誕生日でまた一つ大人に近づいたのか? と呆れるものの、何をしても可愛いが勝ってしまう。
ああ、長い睫毛も、色素の薄いきれいな髪も、透き通るような肌も、甘えた声も、柔らかそうな唇も全てが可愛い。
それに対して真田は、制服の上からでも分かる筋肉があって厚みを感じる体格で、染めることはしていないもののほどよく遊ばせた短髪、切れ長の目、見た目は怖いのに笑うと優しくなる表情、全てがかっこいい。
この二人の絡みは、俺にとって日々の癒しなのだ。家からの距離も学力的にも同じ共学の高校もあったのに、この男子校を選んだのは、自分の色恋沙汰よりも腐男子である趣味を優先させるためなのだから。
こういう何もないやり取りだろうに、腐ィルターを通している俺にとってはとてつもないご褒美。
でも、真田と天城のカップリングはメインではないのだ。涎が出る程の濃いカップリングがある。
今日が天城の誕生日ということをアイツが知っていれば、絶対にかなりの萌えを投げてくるはずだ。
「天城」
「あ、知野 だ~」
来た、来た、来た!
心の中でそう叫んで見えないように小さくガッツポーズをした。知野は俺が一番に推している攻めなのだ。天城が受けとしては一番だからこの二人の絡みは最高で、正直興奮して勃ったこともあるくらい。
教室でも平気でキスをするんだ。チュッなんて軽いもんじゃあない。舌をガッツリ使って、吐息と水音で耳が犯される。
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