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頼むから俺の話を聞いて(3)

「やっべぇよ。こういうの商業本で見た……」  ドアを閉めた後、しばらくその前に立ち尽くし、高ぶる胸を押さえた。興奮で指先が震える。 「あーもう本当に……! 二人とも最高すぎる……」  なんて幸せな環境に身を置くことができているのだろうと、目頭が熱くなった。嬉しすぎて涙が出てしまいそうになり天井の方を見上げ、少しだけこぼれた涎を拭いた。 「栗谷。何してんの?」 「うおっ」  突然真田に顔を覗き込まれ、飛び上がるようにして驚いたせいでバランスを崩した。  床でつるりと足を滑らせ、そのまま体を廊下に打ち付けるだろうと覚悟した時、体格の良いその体に抱き留められた。 「っぶねぇ、そんなに驚くことかよ」 「ごめん」 「お前って時々危なっかしいよな」  真田に抱きしめられ、真田に包まれ、びっくりしたことも、支えてもらったことへのお礼も忘れ、ぼんやりと見つめた。  抱きとめられるってどこの漫画?   これが後輩だったりしたら、一気に真田に落ちるんだろうな。一瞬で虜だろうよ。ここから始まるラブ! 恋をした後輩くんが「先輩! 先輩!」と真田に懐くようになり、関わりが増えて……。  ドジな後輩くんだから真田はいつも心配して見ていて何かある度に「お前って時々危なっかしいよな」って微笑むんだろう。ヒュウ! 「栗谷」 「ほぇ?」 「いつまで俺に支えられるつもり?」  いつまで俺に支えられるつもり? 何その愛おしそうな表情と甘い声……。ウッ、やめてくれよ。妄想が止まらない……! ──って妄想!? 「うっわ、ごめん! マジでごめん! 考え事してた」  時々あるのだ。妄想が止まらなくなって周りが見えなくなることが。頭の片隅では気をつけようと意識しているつもりだけれど、毎日溢れ出ている萌えのせいでコントロールできなくなってしまう。 「俺に抱き留められて俺の顔を見ながら考え事ってどんなこと?」  必死に謝りながらもう離してくれて大丈夫だと真田の腕から逃れようとする俺に対し、まるで獲物を見つけた狼のような顔をして真田は俺を見つめている。俺を支える手には力が入り、はっきりと痛みを感じた。こんなことするなんて、どうしたんだろう……。 「真田?」 「前から思ってたんだけど、時々変なこと考えてるよな? そういう顔してるよ」 「そういう、顔……?」  そういう顔って……? 妄想している時にニヤニヤしているのがバレていたってこと? 

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