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頼むから俺の話を聞いて(4)

 慌てて頬を押さえると、真田は舌なめずりをし、俺の首筋に顔を埋めた。鼻息が当たり、くすぐったくて身を捩れば今度は歯形が付くような強さでそこを噛まれる。 「知野が天城に触れるように、俺もお前に触れてやろうか? 誰かにそうして欲しかったんだろう?」 「……え?」  このままどこかの空き教室にでも行こうかと、真田は俺を抱えた。嫌だと叫んでバタつくも俺を離してくれない。  いくら俺でもこの状況はヤバいと理解できる。漫画でなら全力で真田を応援するし、連れて行かれる受けにも流されてしまえ、抱かれて来いってそんなことを思うはず。  でもこれは漫画でも俺の妄想でもない。俺は腐男子だけれど、掘ってほしい願望は一切ないし、萌えの対象にそういう意味で触れられたくはない。 「あ、栗谷! 真田と何してんの?」   「天城!」  教科書借りに行くんじゃあないの? って、教室のドアを開けた天城が俺らを見てポカンとした。  助けが来たと喜んだのも一瞬だけ。天城は俺らには興味がないようで、知野にベタベタくっついている。 「まぁ何でもいいんだけど。あのね、そんなことよりこれ見てよ。知野が誕生日プレゼントにベルトくれたの!」  そう言ってシャツを上げると、そこにはゴツめのデザインのベルトが巻かれていた。普段の天城ならこういうデザインのものはあまり持たないのに。どちらかと言えば知野が好きそうな……。 「って、ベルト!?」  ベルトって、ベルトって……。確か、「末永く」とか「束縛」って意味じゃあ? 何かの商業本で見たぞ。天城の誕生日に自分好みのベルトを贈るって? それってつまりさぁ……! 「あぁもう、そういうのだよ! 俺はそういうのが好きなの。知野と天城の触れ合いを羨ましいって思っているんじゃあなくて、微笑ましいって思ってるの、興奮して涎が出るの! そういうの見るのが好きなんだよ! だから真田……、お前が思ってるのとは違うんだ……」  このタイミングで自分の趣味を告白することになるとは、そしてその対象が友人のコイツらだったとバレてしまうことになるとは。  まだまだ長い時間を共に過ごさなければならないのに、関係が終わってしまったらどうしよう。これからの俺の学校生活はどうなるの? 萌えは? 全て終わりなのか?

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