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14.「西条さん」3/3*真奈

 西条さんのなんとも言えない視線に、少しいい訳してみようかなと思い、一応、話し始める。 「中学までは明るくていい奴で、ほんとにただ普通にオレ達仲良かったんですけど……母が亡くなって地元から引っ越したり、受験だったりで幼馴染たちとしばらく会ってなくて……。それで久しぶりに会った時、秀人だけ来なかったんです。その時、秀人が高校からあんまり良くない奴らと付き合いだしたって聞いてたんですけど……」 「はい」 「……その噂を聞いた時に連絡とってれば、あんなことにはならなかったかもって思って」  オレはそこで言葉を切った。少し息をついて、その後、まっすぐに西条さんを見つめた。 「秀人から電話が来た時に、助けなきゃって、そう思って、つい……」 「……分からなくはないんですが……もし私が、事前にそんな相談を受けていたら、その方法は止めてますね」 「……ですよね」  ……まあ、それで、売人やれと言われたり。   あそこであのまま暴力とか受けても、正直もう自業自得レベルな気もするような。  あんなところに乗り込んで、絶対クスリなんかやらないとか……バカだったよなぁと、今は思うけど。  あの時俊輔が居なかったら、無事に帰れたかどうかも分からない感じだったというのは、分かってる。  ……だから俊輔がある意味、あの場からは、一応……一応は、助けてくれたのかもっていうのも……まあ、ほんとに、一応は分かってる。 「真奈さんと幼馴染の方は、特別な関係という訳ではないんですね?」 「幼馴染で特別ですけど……特別なって、それって……?」  不思議に思って西条さんを見つめると、西条さんはふ、と笑った。 「そういう意味で、真奈さんに思う方が居るなら、若のしていることは、更に不毛なものになってしまいますからね」  あ、これも若には秘密でお願いします、と笑った西条さんに、小さく息をついてから。  「オレ、男は恋愛とかの対象じゃないんで」  そう言ったオレに、西条さんは、はい、と頷いて見せた。 「……真奈さんにとって迷惑なのは百も承知ですが……少しでも快適に居て頂けるよう、その為なら何でも致しますので」  ……致しますので。  ……致しますので、何なんだよう……。  ……とは、言えなかった。どうせ分かり切った答えが返ってくるだけだし。  またすぐ戻りますので食べたらそのままで大丈夫です、と言って出ていった西条さんに、何だかどっと疲れて、椅子の背もたれに寄りかかって、天井を見上げた。  ……いっぱいしゃべっちゃった……。なんか緊張した。  オレは、はあ、とため息をついた。  西条さんにとって、絶対は、俊輔。  ……俊輔が望むなら、オレの気持ちなんか、後回し。  まあ、もちろん、分かってたけど。  しかも、彼は、オレがここに来た経緯も知ってるし。  自分から飛び込んだ挙げ句……どうなってもいいとか……俊輔のモノになるとか。オレは受け入れたんだ。……全然考えてもなかった、歪んだ要求だったけど。  ……結果、俊輔は、あれ以上秀人には手を出させないという約束を守ってくれたみたいだし。だから。合意の上というか。取引したというか、そんな感じでオレがここに居る事も知ってるから。だからこそ、あの態度なのだろうけど。  ……っていってもさ。  ――――…… こんな事、要求されるなんて。  ……誰がそんな事、予想できるっつーんだよ。    はー――――……。  ……何か、ほんと、疲れちゃった……。  ルークと遊ぼ    ほんとに……。  ……何で俊輔は、オレをここにつなぎとめて置きたいんだろう。    執着してるっていうのは、なんか、そう思うけど……。  ……惚れられてるとかは思わないし。……ていうか、思えるか。あんな態度で接されて。  ……じゃあ、何だろ……?  ……とにかく分かっている事は。  一般論は、とうていハマらないって事。  ほんと、全然理解できない……。

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