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14.「ルーク」*真奈

「だー……もー無理!」  散々ルークと駆け回った後、オレは芝生に座り込んだ。   「ルーク、おいでー」  ボールをくわえて戻ってきたルークを座らせて、その顔をじっと見つめる。  ハッハッと忙しく息をしながら、じっと見つめ返してくるルークに、自然と笑みが漏れた。 「……お前、ほんっと可愛いな」  ぎゅう、と首に腕を回して抱き付くけれど、嫌がりもせずにそのままオレの為すがまま、大人しく座ってくれている。 「何でお前はこんなに素直なんだろ?」  少し離れて、その頭をナデナデしながら話しかける。 「お前のご主人様は素直じゃないっつーか、意味わかんないっつーか……あんななのに、何でお前はこんなに可愛いんだろうなぁ? 良かったな~、飼い主に似なくて」  笑いながら話しているオレをじっと見つめていたルークが、不意に動いたと思うと、オレにのしかかってきた。 「ぅわ!」  何やらものすごい勢いで顔を舐められる。 「くすぐっ…… こら、るー…… ちょ…… もー、お前、何キロあんだよー」  退けようとしても重くてなかなか動かない。  舐めてくるのは可愛いので手加減してるのもあるけれど、しばしの攻防の後、芝生の上に押し倒されてしまった。  オレの上で、わん、と軽く吠えたルークに、オレは笑い出した。   「……わん、じゃないよ……」  ――――……はー…… 疲れた……。すごい走った。  つか、風呂、はいろ……。  何だかいっぱい舐められるし、いっぱい泥はついてるし、こんなんで部屋に居たら、絶対俊輔に怒られる……。  と、そこまで考えて。  ――――……俊輔の悪口言ったから怒ったのかなあ?  ルークのつぶらな瞳に、オレはちょっと首を傾げつつ、また、クスクス笑った。  まっすぐ自分を見つめてるルークが可愛い。 「はー。すげー、疲れた……」  どれ位、走ってたかな……。  見上げる空はもう真っ暗で。隣にお座りしてるルークの背を撫でながら、ふう、と息をついた。 「――――……ルークもエサの時間だよな?」  言うと、またタイミング良く、「わん!」と吠える。 「……やっぱお前って、言葉の意味分かってるのかなぁ?」  クスクス笑いながら、むく、と起き上がった瞬間。  ルークがぴく、と反応して駆け出して、同時にオレも人の気配を感じて振り返った。 「え」  西条さんだと思ったら、俊輔だった。 「あ」  ……つか、何か言いながら来てくんないかな。  さっきの、飼い主に似なくて、とか、聞かれてないよね……?   ……た、たぶん、大丈夫なはず。あの時はまだ近くには居なかった、と思うんだけど……。  ルークも気づいてなかったもんな、平気だよね。   「ワン!」  嬉しそうにしっぽを振って、ルークが俊輔にまとわりついている。  それを俊輔が頭を撫でながら、あやしている。  ――――……こんな、愛想のないご主人様でも、やっぱり嬉しいんだなぁ……。  ルークの喜び方が可愛くて、ふ、と笑ってしまう。

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