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21.「何で?」*真奈※

「今取り込み中。明日またどこでも連れてくから、大人しく寝ろよ」  彼女……梨花が入ってくるのを俊輔が遮る気配。それに少しだけ、ホッとする。 「どうして? あたし、俊と一緒に寝たいし」 「取り込み中だって言ってんだろ」 「じゃあ用事が終わったら来る。 それならいいでしょ?」 「駄目だ。 また明日な」  俊輔の声が聞こえて、少し、梨花が黙っていて。  「……あたし、前みたいに俊と、夜、過ごしたいの」  その言葉の意味は、よく分かる。  けれど、俊輔はすぐに、駄目だ、と言った。 「どうして? あたしの事、嫌いになっちゃったの?」 「嫌いとかじゃねえけどな――――……とにかく自分の部屋で寝ろ」 「……じゃあ、明日は?」 「大学から帰ったら、お前に付き合うから。じゃあな?」 「もう……! 俊のばか!!」  梨花の声と扉が閉まる音。それらが同時に聞こえた。  部屋に鍵のかかる音がして、すぐに俊輔が戻ってきた気配。  とりあえず開かれていた脚は閉じていたけれど、シャツをほとんど引っかけただけの体で、自分で自分のを掴んでるなんて。  そんなとんでもない自分の姿、嫌という程に認識しているので、恥ずかしさにきつく瞳を閉じた。 「――――……ふぅん……」 「……?」  ぎゅう、と閉じていた瞳を開くと。 俊輔がこっちを見ている。   「……すげえ、ヤラシイカッコだよな?」 「……」  ……誰のせいでこんなカッコしてると思ってるんだよ……!  ていうか、風呂って言ったじゃん! だから嫌々脱いだのに、何でこーいうことになってんの? もう。もう。  心の中で叫ぶけれど。 「手、放していい」  すぐに手を外されて、俊輔の手の平に包まれて、その叫びすらも掻き消える。 「……ちゃんと我慢してたな」  くす、と笑う俊輔を睨み付けてやりたいけれど、そんな力は残っていない。  ぎゅ、ときつく瞳を閉じる。  軽く抱えられて、ベッドの真ん中に移動させられる。  脚を再び開かれて。少しだけ間を置いて、押しあてられると。一気に突き上げられた。 「……ん、あ……っ」  いきなり奥まで入れられて、その衝撃に堪えきれずに、イッてしまう。 「んんっ…… あ……や……!」 「……早ぇよ……」  クッと、耳元で笑う俊輔。  けれど、愛撫は緩まない。今度は、ゆっくりと慣らしながら、また、奥まで侵入してくる。 「あ……く……っ……」  唇を噛みしめて。 ――――……自分を犯してる、男を見つめた。 「……なん……で?」 「……ん?」 「しゅ……け、と…… 寝たいって……子が……居る、のに…… 」 「――――……」  口をついて零れる喘ぎが邪魔をして、言葉が、満足に話せない。  けれど、俊輔が少し黙って聞いてくれているのをみると。多分、聞き取っては、くれているのだと思った。 「……なんで……?」  どうして、俊輔に愛されたがってる子を追い返してまで。  何で、オレを、こんな風に、抱くのか、全然分かんない。  聞いたオレに。  ……俊輔は、無言で、腰を強く掴むと、また深く、突き上げてきた。   「……ンん、ぁ、あ……っ……」  何度も、突き上げられて、ゾクゾクして、俊輔にしがみつくと。 「相手がいねえから、オレがお前を抱いてんだとでも思ってンのかよ?」 「……え……?……」  突き上げられる衝撃。 その感覚で、目の前が真っ白になる。  言われた言葉を、思い出しながら。少し首を振った。  そんな風に思ってる訳じゃ、ない。  だけど――――……じゃあ……? 「……っん、ぁ…………あ……!」    それ以上は聞けなかった。  俊輔が、もう何も言わせまいとしてるかのように、激しく、動き始めたから。  後はもう。  ――――……いつも通り。  激しい快感に、翻弄されるだけ、だった。  

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