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22.「分からない」*俊輔

 今日、凌馬と会った帰りに、ペアのバングルを買ってきた。  シャワーを浴びながら、それをどうしようか、考えていた。  部屋に戻って、シャワーを浴びて一息つく。目の前のローテーブルに置いた紙袋と水を手にして寝室に行き、真奈の眠っているベッドに腰掛けた。  やっぱ柄じゃねえよな……。  思いながら、過度なプレゼントの包装を破って開く。  中のケースからバングルを取り出して、小さい方を手でしばらく弄りながら、寝ている真奈の方を見やる。  枕を抱えるようにして、腕を伸ばして眠っているから、手首がちょうど見えた。 「――――……」  その伸ばした左手首に触れ、する、とそれをはめさせた。  程なくして、真奈は寝返りを打ち、ゆっくりと、瞳を開いた。 「……起きたのか」 「……うん」  手にまだ大きい方のバングルを持ったまま、真奈を見つめていると、真奈は、手首にはまってるバングルを見て更に不思議そうな顔を見せる。    やる、と言うと、更に不思議そうな顔。さっき聞いたばかりの「誕生日祝いだ」と告げると、不思議そうな顔のまま、真奈はオレを見つめている。その視線に不機嫌になって、オレは真奈を睨んだ。 「……なんだよ」 「……え。……あ、いや……あり、がと……」  ぽつりとそう礼を告げて、真奈はしばしバングルを見つめている。  その後、オレの持ってるもう一つに気づいた真奈に、セットで売ってたと言ったら。 「ふうん。じゃあ、お揃いなんだ?」    と、何気なく、そう言った。その言葉には何と返して良いか咄嗟に分からず、マジマジと真奈を見つめてしまった。オレの視線に、お揃いと言ったことに気づいたのか、うろたえて、オレをただ見つめ返してくる。  多分何も考えずに出した言葉だったんだろうとそこで思った。  ほんと、馬鹿だな……。 「ペアで何かを持った事、あるか?」 「え? あ。…… 無い、かな」   「――――……オレも、ねえな」   ある訳ねえんだよな、鬱陶しい……。  見た目から縛られてるみたいなそんな真似、絶対冗談じゃねえし。  ……じゃあ何で、オレはこれを買ってきたんだ。  オレが黙ったまま、大きい方のバングルを手の中で転がし、視線を落としていると。 「――――……それ、どうするの?」  と、真奈が聞いてきた。   「……あ? なんだ?」 「俊輔は、しないの?」 「―――――……お前、オレとペアにしたいのか?」 「……」  したくねえだろ?  そう思いながら聞いた言葉に、真奈は目をぱちくりさせて、それから眉を顰めた。 「……別に……一個くらい、同じ物持ってても良いような気も……」 「―――――……」  咄嗟に返事が出来ずに居ると、真奈は続けて、こう聞いてきた。 「……デザインが気に入ったから買ったんじゃないの?」  真奈を見つめて、オレは苦笑い。  あの時、乗り込んできたのだって、人のため。  こんなオレのことも、身を挺して、馬鹿みたいに庇う。  こんな風に監禁みたいな真似されて、毎晩抱かれて、その相手とよく、ペアを付けても良いなんて言うよな、お前は。  本当に、オレにはお前がわかんねえ。  

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