110 / 114

21.「固まる」*真奈

 なんかそこからは、二人が暴走族のチームの話。  オレは、運ばれてくるつまみっぽいものをたまにぽりぽり食べながら、なんとなくお店の中を眺めながら。一応聞こえてはいたけどあんまり興味もなく。だって、凌馬さんが引退したらどうするかという話、オレには口出しすることはないし……。 「真奈、これうまい」 「ん……」  ほい、とナッツを渡されて、またそれをぽりぽりしてると。  凌馬さんが、それを見てて、ぷ、と笑う。何も言わなくていい、と俊輔が凌馬さんに言って、そのまま話が再開。  凌馬さんは何が面白いんだろう、なんかよく、オレと俊輔のやリとりを見て笑うけど。別にすごく仲良くしてる訳でもないし。 「真奈、何か飲むか?」 「ううん。まだ大丈夫」  ありがと、と一応言うと、俊輔はオレをふっと見つめる。すると、凌馬さんが僅かに笑った気配。  そのまま俊輔は何も言わずに凌馬さんを睨む。で、凌馬さんはまた笑う。 「――なんかお前らって、中学生みたいだな」 「……は?」  超不愉快そうに、俊輔が凌馬さんをきつく睨むけど、凌馬さんはクッと笑って、オレに視線を向ける。 「やることやってんのに、ありがと位で微妙な空気。……意味わかんねえな」  クスクス笑いながら、頬杖をついて、オレを斜めに見つめる。 「もしかして俊輔って、恋愛は初めてとか?」 「――――あほか」  一言冷たく言い放つ俊輔に、凌馬さんは、ぷっと吹き出してから、やれやれと大げさにため息をついた。 「恋愛、だぞ、恋愛。……セックスがうまいとか、モテるとか、そういう話じゃねーからな。誰? お前、高校からで、誰と恋愛した?」 「……るせえな、もう話終わりでいいか」 「は? ……まあとりあえず、今日はもう終わりでもいいけど……」  凌馬さんだけ楽しそうに笑い続けてる。  ……恋愛か。  俊輔って、恋愛したこと、あるのかな。 「真奈ちゃんは? 好きな女、居たことある? 恋愛してた?」  それくらいは、ある。ていうか付き合ったりもしてたし。嘘ついてもしょうがないかなと思って、とりあえず、頷くだけ頷いた。 「どんな子?」 「……普通の……優しい子、だったような」 「ああ。ぽいな。可愛くて優しい子、似合いそう」  頷いてる凌馬さんを見ながらちょっと考える。  ――――俊輔のところに来る前はだれとも付き合ってはいなかったけど、気になってる子は、居た。同じ授業をよく取ってた子で……でも、しばらく、思い出すことも無かったな。元気かな。  そっか。今度、学校に行ったら、会えるのか。  ……でもなんだか、心ときめきはしないような気もする。  なんかオレの世界って、俊輔以外の他の世界には、もう幕が張られちゃってるみたいに良く見えてない気がするというか。なんか、すごく遠いんだよなぁ……。  学校に行ったら、戻るんだろううか……。 「あ。俊輔が機嫌悪くなるから、この話はここまでにしとこ」 「なってねーし」  鋭く突っ込んでる俊輔にも構わず、凌馬さんはまた笑う。また二人が別の話を始めたので、なんとなく聞きながら、ぼんやり、考える。  あの子と、大学で会ったとして――。なんかもう忘れてた位だけど……あれだよな、でも結構仲良かったし。普通に話しかけられたとして。  だからって、その子と付き合うとか、今全然考えられない。  ……やっぱり今のオレ、そういう、女の子とのこととか、なんも考えられないかも……。  かと言ったって、別にオレ、俊輔と付き合ってるわけではないし。  ……オレは、俊輔のもの、らしいけど、あれから、全然、そういうこともしないし。  うーん……? オレが俊輔といる意味って。  凌馬さんに助けてもらって、俊輔の元に戻ってから、ずっと、考えてることを、また考える。    

ともだちにシェアしよう!