111 / 139

22.「仲良く?」*真奈

「じゃあまたな」  俊輔が凌馬さんにそう言って、立ち上がったので、オレも続けて立ち上がった。宗がやってきて、「またなー?」とオレに言ってくる。会うかな?と思いながらも、うん、と頷く。 「またな、真奈ちゃん」  ニヤ、と笑う凌馬さん。  ……なんか凌馬さんには、しょっちゅう会ってるような気がしてくるので、また会うかも、と思うことがまず不思議。なんて思いながら、はい、と頷いた。  別れてから店の外に出て、バイクにまたがる俊輔の後ろに乗ると、オレを振り返りながらヘルメットを渡してくる。 「体調は平気か? 疲れたか?」  そう聞かれて、少し、と頷いた。  ……今までなら、大丈夫って言ったかも。でもなんとなく、今は、俊輔の心配は本当なんだろうと、思えて。言ってみてもいいかなと思ったから。 「分かった。まっすぐ帰るから。ちゃんとつかまってろよ」  ん、と頷いて、ヘルメットをかぶると、俊輔の腰に手を回す。  抱き付いてる、みたい。  ……って、そのまんまか。みたいじゃなくて、抱き付いてるのか。 「――――」  こんな外見良くて、すっごいお金持ちで。暴走族とかやっちゃってカリスマっぽいし。  望めば、特に女の子なんか、すぐに喜んで俊輔のところにいくだろうなって思う。多分、それが客観的な、俊輔の外側。  ……でも、俊輔は、今それをしてない。  オレと会ってからは、オレを俊輔の部屋に置いてる。  ふと思ったんだけど。  嫌ってたり、嫌な相手だったら、自分の部屋にはおかないんじゃないかって。  オレが倒れて西条さんに寝かされた部屋には鍵がかかるし、ああいうとこにオレを閉じ込めておいて、シたい時だけする、みたいなことだって、できたんだろうなって思って……。  俊輔が寝るところに、オレを寝かせてたこの数か月。  ……嫌ってるとかは、最初から、無かったのかな……と。  オレが逃げ出した一連のことがなければ、オレは、こんなことを考えることは出来なかったかもしれないけど。  ぎゅ、と俊輔にしがみつく。信号で止まってた俊輔は、ふ、と後ろを振り返ったけど、オレの顔は見えないまま、また前を向いた。  ……少し。  …………ほんの少しだけど。  もう少し、俊輔と。  仲良くって言ったらなんか、良く分からないけど……でも、もう少し、普通に話せるようになりたい気がする。  多分……俊輔も少しは、そう思ってくれてるような気がするから。  流れていく、車のライトが綺麗に見える。  俊輔と居る時に、こんな風な穏やかな気持ちになれるとか、ほんの少し前は思わなかった。  そのまま、何も話すことなく、俊輔の屋敷に戻った。  西条さんが出迎えてくれて、俊輔と少し話した後、オレの方を見てにっこり笑った。 「急にあちこち出て、お疲れではないですか?」  西条さんの言葉にオレが答える前に、「聞きながら移動したっつの」と、俊輔が言った。そのセリフに、西条さんは苦笑いを浮かべた。 「若に聞かれたら真奈さんは無理されると思うんですよ。ちゃんと、優しく聞きましたか?」 「……聞いた」 「本当ですか?」  くす、と笑って、オレを見つめてくる西条さんに、オレは聞かれた時のことを思い出しながら、頷いて見せた。 「ほらな」  なんだか偉そうな俊輔とオレを見比べて、西条さんは、ふ、と微笑む。 「とりあえず先にシャワー浴びる」  言って、俊輔が部屋のドアを開ける。はい、と頷いて、西条さんは離れていった。オレも俊輔に続いて部屋に入ると、ぐい、と腕を引かれた。 「お前も来い」  そんなにひどくひっぱられてる訳じゃないけど、振り解けずに、オレは、俊輔の後をついて、脱衣所に入った。

ともだちにシェアしよう!