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46.モヤモヤの正体*真奈

「――――」  頬に触れられて、じっと見つめられる。なんだかすごくドキドキしてきて、オレはただ俊輔を見つめ返していた。  やたら静かだ。心臓がドキドキしてる音、聞こえちゃうんじゃないかなと、思った瞬間。  抱き寄せられて、すっぽり、抱き込まれてしまった。 「……すこし――このままでいいか」  耳元で囁かれて――自然と、ん、と小さく頷く。  少し後。垂らしたままだった腕をゆっくりと持ち上げて、俊輔の背中の服を握り締めた。 「――……」  ふ、と、見上げると、ふ、と瞳が緩む。  なんか、すごく優しい顔、してる。 「――俊輔、酔ってる?」 「んー……まあ、少しな」 「……そっか」  何だかゆっくりな返事の仕方に、ふふ、と笑ってしまう。 「――悪い。お前が来た経緯は、話すと厄介だから、話さない」 「……ん」  それは分かるので、ん、と頷く。 「梨花の時のこともあるから、違う部屋で寝てるってことにしたくて、この部屋に来させたけど……でも別に、お前のこと、隠したいとかじゃねえから」 「――……」 「……って。何言いたいか、わかんねえか……」  オレを抱き締めたまま、俊輔が呟いて――それからまた、ぎゅ、と力を入れた。  ……何言ってるかは、分かるけど。  ――どういう意味かは良く分かんない。  ――隠したいとかじゃないって。 「……オレも……余計なことは言わない方がいいと思うから、全部、これで良いと思ってるし。そこは、何とも、思ってない」  オレが言うと、ふと顔を少し離して見つめ合って。少しの間無言だった俊輔が、ふ、と苦笑した。 「そこはってことは、なんか、他に、思うことがあるんだよな?」 「――」 「言ってみな?」  クスクス笑う俊輔の手が頬に触れる。 「――俊輔は、いま、どうして、ここに居るの」 「――――どうしてって……」 「……オレ、色々考えてたんだけど、ずっと……なんかモヤモヤしてて」 「――ん」  少しだけ唇を引き締めて、俊輔がオレを見つめる。 「なんかオレ俊輔と、いつも、一緒に居てもね……」 「――ああ」 「……怒らない?」 「は? 怒らねえよ」  苦笑いの俊輔を見上げて、思い切って。 「俊輔と居ても、何話していいかまだ困るし、ちょっと気まずかったり、よくわからない時がいっぱいあるのに」 「――おい」 「……怒った……?」  聞いてみると、「怒ってない。ツッコんだだけ」と微笑む。穏やかな笑みを不思議に思いながら。 「……なんか、一人で――モヤモヤしてて」 「……ん?」 「顔見て、思ったんだけど――なんか、ここに一人って、寂しいな、て思ってた、のかも……」 「――」 「来てくれた時、なんか――ちょっと嬉しかった、かも……」  なんか俊輔は真顔だけど。  視線は、逸らされなくて。オレも目を離せない。 「オレは――昼間から、側には居たのに離れてたから、来た」  え、と思った時。不意にオレは、ドアに背を付けられた。  その手が、オレの頬に触れて、上向かせられて。   「キスしたい。嫌――じゃないよな?」  そんな聞き方。  ……もう聞いてないじゃんね。  壁と俊輔の間にとらわれて。  少しだけ頷いた瞬間、唇が触れて、そのまま上向かされて。  深く重なってきた。すぐに涙が、滲む。  心臓が、破裂、しそう。

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