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11/4 ムラサキシキブ
花言葉 愛され上手 聡明 上品
僕の好きな人は人気者だ
高身長、イケメンで優男、なんなら笑顔も爽やか。いつも誰かに囲まれていて楽しそうな笑い声で溢れている。
人柄がいいこともさることながら仕事もできて同僚だけじゃなくて上司からも好かれている。このままだと出世コース間違いなしだろう。実際本社出向とかそういう話が来ているという噂はちらほら聞いている。それなのに一向に異動の話は出てこないから、社内ではもしかしたら恋人がいて話を断っているのではと言われている。
まぁ僕としては一緒に仕事できる今の状況が続くのは嬉しいわけだけど。もし本当に恋人がいるとかならショックでしばらく立ち直れない自信がある。そもそも男の僕には最初から望みなんてないしどうしたってそうなる未来しかないけど。
「はぁ…」
ため息をついてデスクに突っ伏す。勝手に想像を膨らませて勝手に堕ちていく、もはや最近のルーティンになっている。
「どした?でかいため息ついて」
ため息の元凶が隣の席に戻ってきて頭を撫でてくる
「…なんでもない」
「なら、いいけどさ、なんかあったら話くらい聞くから遠慮なく言ってくれよ。同期なんだし」
お前のせいだ、なんて言えたらこんなにモヤモヤすることもないんだろうけど、言えるわけないんだよなぁ
「はぁ…」
「本当に大丈夫か?熱とかないよな。ちょっと触るぞ」
そういって頭を撫でていた手で前髪をかきあげて額に触れられる。自分よりも大きくて男らしい手、そのくせ肌はきめ細かくて触れられるとその滑らかさが直に伝わってくる
「ん…きもちい…」
「っ?!?!」バシッ
「あだぁっ?!」
なぜか思いっきり額をはたかれた。しかも結構な強さで
おでこをさすりながら叩いた本人を睨みつけるとなぜか口元を押さえこちらを凝視していた
なんでお前の方がびっくりしてるんだよ
「わっ悪い!大丈夫か?!」
わざとではなかったらしい
「うん…だいじょぶだから仕事しろ」
「お、おう…ほんとごめんな」
「別にいいから」
お互いに自分のデスクに向き直って仕事を再開したが昼休みになるまでチラチラとこちらを見る視線がうるさかった
★☆☆☆☆☆☆☆☆
「んー…休憩するかー」
ぐっと伸びをして固まった身体を伸ばすと少し前からそわそわしていた隣の男が声をかけてきた
「昼、一緒にどうだ?さっきの詫びでなんか奢らせてくれないか」
どうやら、ランチのお誘いをしようと思ってさっきから落ち着きがなかったようだ。初めての意中の相手からのお誘いなんて願ってもない。
「別に気にしなくていいって言ったのに、でも、まぁ奢ってくれるっていうならお言葉に甘えようかな」
「ほんとか?!いつも昼になるとすぐにどっか行っちまうから誰かと一緒にとかは嫌なんだと思ってた」
「別にそういうわけでは」
昼休憩になったらお前を誘いにわらわら人が集まってくるからその前に逃げてただけだけ
「じゃ、じゃあ、これからも誘っていいか!?」
「え、それはいい、けど。お前目当てで誘いにきてた奴らから恨まれそうだなー」
「大丈夫大丈夫。そもそもあいつら俺目当てで来てたわけじゃないからさ」
「は?それってどういう」
「まぁ!そんなことはどうでもいいから!さ!他の奴らがくる前に行こうぜ!」
「ちょっまっ引っ張んなって!」
なぜか慌てた様子で腕を引かれ早足で会社から連れ出された
二人がいなくなった後、そのデスク周辺が歓喜と祝福の声でどんちゃん騒ぎになっていたとは僕は知るよしもない
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