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11/10 ブッドレア

花言葉 恋の予感 あなたを慕う 季節が変わり風がだんだんと冷たくなるこの時期山々も鮮やかに色づいてくる 朝イチは息が白むこともある。今日も気温が低く仕事に行く前にいつものコンビニに寄って肉まんを買った 一口頬張ると暖かさがじんわりと体に染みていく 「んん〜うまぁ」 寒いのはあんまり好きではないが暖かい食べ物が美味しくなるのはいいよなぁ 「んふふ〜朝から幸せ〜」 「相変わらず美味そうに食べますね」 「ん?おーおはよ」 「おはようございます!」 肉まんを頬張りながら歩いていたら後ろから声をかけられた。さっきのコンビニで深夜バイトをしている男子大学生だ。最近バイト上がりに声をかけてくれるようになったのだが、こんなおじさんと話ししてて何が楽しいのかは分からない、が慕われるのは悪くはない、と思う。なんだかんだ朝の楽しみになっている。 「今日は上がり?」 「はい!これから一回帰って大学です」 「そっかそっか。がんばれよー」 「へへへ。はーい!」 ぽんぽんと肩を叩くと嬉しそうに笑った。 「あ、そーだ!はい。これ、いつも頑張ってる若者におじさんからプレゼント」 ガサガサと先ほど買ったコンビニのビニール袋から暖かい珈琲を取り出して渡す 「え!いいんですか?」 「おー眠気覚ましにどうかと思ってさ。俺が来る時間に合わせて肉まんとか準備してくれてるだろ?何かお返ししたいなって」 「〜〜〜っ!!!!嬉しいです!!っていうか気づいてたんですね」 「まぁ、君がシフトに入ってる時と入ってない時でホットスナックの品揃えが全然違うからね。そうじゃないかなって。まぁ俺の思い上がりだったらただの勘違いの恥ずかしいやつなんだけど、ははは」 「……勘違いじゃないです。なんなら、あなたのお気に入りのものだけだと露骨すぎるかと思ってバレないように一通り準備してました」 まぁ気がつかれちゃってたみたいですけどと頬をかきながら笑う。 本当にいい子だなぁ。これだけ気配りができるなら女子からもモテモテだろう 「なんですか、ニヤニヤして」 「いやー?こんな好青年、周りの女子がほっておかないだろうなーと思ってさ。うん。いいねー青春だねー」 「…勝手に盛り上がってるところ悪いですけど、女子には興味ないんで」 「へ?」 「俺!好きな人いるんで!!これからもっともっとアピールするから覚悟しておいてくださいね!!」 「え?あ、ああ、うん。がんばれ?」 「はい!がんばります!!! じゃ、俺はこれで!また明日いつも通り準備して待ってますね!!」 「お、おう。また明日な」 走り去る背中をぽかんとしながら見送る 「さっきのはどういう…?ていうか、好きな人って」 まさか…いや、そんなまさかな 随分と暑くなってしまった身体に冷たい秋風が沁みる

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