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11/11 カラスウリ
花言葉 よき便り 誠実
拝啓、こちらは秋も暮れる頃となりました。いかがお過ごしですか。そちらはやはりここよりも寒いのでしょうか。お風邪などないようご自愛ください。こちらは変わらず元気にやっています…
届いた手紙に書かれた堅苦しい文言を読みながら苦笑する
幼馴染に対して送る手紙なのに本当真面目というかなんというか
「ま、相変わらずってことはいいことなんだろうけど」
大学で離れ離れになってしまってから定期的に手紙でやり取りをしている
こんなスマホの時代にと思うかもしれないけれど彼がその方がいいと言うので最初は面倒だと思っていた俺も今では慣れない手書きの字で返事を送っている
たしかにスマホの画面に映る無機質な文字列よりも手で書いた字の方が相手が自分を思って書いてくれたんだなという暖かみがあるような気がする
「返事、書くか」
カバンから便箋を取り出して、返事には何を書こうかとペンを遊ばせる。
元気そうで何よりです。こっちも結構寒くなってきたよ。外に出る時は風邪ひかないようにもこもこになるくらい着込んでるよ。あ、でもこっちの人たちからするとオシャレにはもってこいの時期らしくて外歩いてるとみんなキラキラしてて流石海外って感じです……
日本にいる幼馴染に向けた手紙は届いたものに引っ張られてヘンテコな丁寧文になってしまう
これもいつものことだけど
「んふふ。なんかいいな、こういうの」
「Hello, what are you doing laughingly alone? Weird(やぁ、一人で笑って、何してるんだい?不気味だよ)」
前の席に座ったこの国で知り合った友人に話しかけられる
『んー?手紙書いてんの。ていうか不気味って失礼だな』
『へー。日本の恋人からかい?』
『いーや、違うよ。まだ、ね』
『うわぁ。その口ぶり、自分に惚れさせる自信満々って感じだね』
『まぁね』
そのためにこれまで幼馴染の立場からじわじわ距離詰めてきたんだから。
『日本に帰国したら本腰入れて落とすつもりだよ』
『わーお。いやらしい顔してる。ま、応援はしてるよ』
『おう!ありがとな』
とりあえず、卒業までのあと数年、逃げ道を一つずつ潰していって俺以外の選択ができないようにしていかないとな
まずはこの手紙から
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