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11/14 皇帝ダリア
花言葉 乙女の真心 乙女の純潔
11/12 レモンの別視点
王太子主催の舞踏会でのまさかの婚約破棄騒動
「……ご機嫌よう」
そう言って場を後にする彼からは憎悪や嫉妬などの負の感情は見受けられず、潔く気高い立ち居振る舞いはむしろこれから先を見据えているかのようだった。
そういえば、あいつは元々そういうやつだ。自分がΩであることに挫けず、将来この国の王太子…オレの腹違いの兄の隣に立つに恥ずかしくないようずっと努力していたのを知っている。お飾りの妃にならないよう基礎的な勉学はもちろんのこと政治や経済、果ては孤児や困窮者への支援、環境保全などの知識まで…先を見て行動していた
ただの婚約者の弟がここまで知っているのだ。婚約者本人の兄が知らないはずはないのに
あの馬鹿な王太子はポッと出てきた愛嬌しか取り柄のないΩに陥落させられた
そういえば、真の運命の番だなんだといっていたな
正直グレナとかいうやつは気に入らない。Ωとしてのランクが高くあちこちでフェロモンを撒き散らしてやがったし、それに誘われたαに対して色を使っていた
そう、別にあいつは兄でなくとも誘惑するのに躊躇のないやつなのだ。愛してくれるのであれば誰でも受け入れる。オレも一度あいつのフェロモンに当てられたことがあるが甘ったるすぎて吐き気を催した覚えがある。
強力な抑制剤を内服して人前でフェロモンを出さぬようにしていたリモネとは正反対だ。強い分副反応も大きかっただろうに、一切そんな様子は見せていなかった
兄の言う、リモネが働いたというグレナへの嫌がらせも口調や態度はきつかったが王太子の隣に立つ覚悟があるのなら最低限の礼儀やマナーを弁えろと言ったようなものがほとんどだと聞いている
身体を害するような直接的な嫌がらせは本人はしていない。取り巻きがやらかしたことはある、なんならその罪を自ら被っているとは報告を受けたが…馬鹿だなとは思う。他人の犯した罪などすておけばいいのに。しかし、だからこそ、階級関係なく周囲から慕われていたのだろう。
かくいう俺も婚約者の弟という立場でありながらリモネの魅力に惹かれていた1人である
兄の次くらいにはあいつの側にいた自信がある
どうせ、兄がいるかぎり皇位継承など俺には無縁な話だろうし、言い方は悪いがこれは好気かもしれない。
そう思い外に出て行ったリモネを追いかけた。
「……幸せに……からな」
扉の向こう側にいたその人物は静かに涙を流していた。そして、何か呟き覚悟を決めた瞳で歩き出そうとしていた。強く美しい姿に一瞬息を呑むほど見惚れてしまう。
「リモネ!!」
名前を呼び止めると驚いた顔でこちらを振り返った。
「ウォトカ、様?」
なぜここにいるんだと言わんばかりの反応だ
なんなら、なにかストーリーがとかゲームではとかぶつぶつと呟いている。
「お、おい。大丈夫か?さっきから何を言っているんだ?」
「あっ!いえ、なんでもございませんので、お気になさらずっ!うぇっ?!」
なぜか焦っているリモネに近づき流れ続けている雫を指で掬い上げる
「なぁ、俺では代わりにならないか?」
元々兄に万が一のことがあった時のスペアみたいな存在だし、こいつにとってもそういう都合のいい相手になれるのではなんて
「……ウォトカ」
「?!おっおう…」
さっきと打って変わってドスの聞いた声で名前を呼ばれてびくりと身体が反応してしまった。昔からそうだ、俺を叱る時にこのジト目といつもよりも数段低い声を使ってくる。そのせいか条件反射で一瞬身体が硬直する。
「代わりとかそういうのやめろっていつも言ってるだろ。お前はお前なんだから、ジン様…あいつの後を追う必要なんてないんだぞ」
だから、あいつの元婚約者だからって俺のこと追いかけたりしなくてもいい
そう言われてしまった。別に追いかけてきたのは兄の後をとかそういうわけではないのだけれど
「それに、お前は弟みたいな存在だし、代わりも何も、ねぇ?」
「おと、うと…弟ね。まぁ知ってたけど…」
「おっと…これは大変失礼いたしました。ご無礼をお許しください。それではわたくしはこれで」
くるりと踵を返し再び歩き出す
「あっおい!お前はこれからどうするつもりなんだ?」
婚約破棄された上その理由も理由だ。まぁほとんどが誇張されて実際とは違うのだが、王太子が事実といえば国としてはそちらが真とされるだろう。
「まぁ、よくて勘当されてどこか遠くに飛ばされるか、悪くて罪を償うために首を切られるか、かなぁ」
「そんな……俺は、死ぬなんて許さないからな!」
「は?誰もむざむざ殺されるつもりなんかないよ。自分から贖罪のためって言って家を出ていくさ。そのために今急いで帰ろうとしてんの。あの王太子の遣いがお父様に余計なことを伝える前に…だから!俺は帰る!じゃあな!」
そう言って今度こそ急ぎ足で去って行った
「……家を出て遠くに……よしっ!」
なら俺もそれについて行ってやろうではないか!弟の立場から脱するためにはもっと近くでアピールしないといけないみたいだしな。
「まずは、父上に王位継承権の放棄と王室から離れることを伝えるところからか」
覚悟しろよ!リモーニオ ディ リモーネ!お前は俺と幸せになるんだ!!
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