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11/16.12/26 クリスマスローズ
花言葉 私の不安をやわらげて 慰め
ガタンッ!!ゴトゴトゴトゴト!!
「ひぃ?!?!」
まただ…また今夜も家鳴りが…
数日前から突然始まったこの現象
しかもよりにもよって俺の誕生日に…
「なんだってんだよ!今年一年は良くない年になるってか!?」
興味本位で行った占い師の話じゃ、素晴らしい一年となるでしょう。素敵な出会いが待っていますよ!とかなんとか言われたが
「別に幽霊との出会いなんて求めてねぇんだわ!!!!ていうか!なんか言いたいことがあるなら回りくどくガタガタガタガタしてないで直接言ってこいよ!根暗クソ幽霊がぁぁああ!!!」
『誰が根暗クソ幽霊だって?』
「はぁ?誰ってお前に決まってん、だ、、ろ、、、???」
『許婚に対してその言い種はないだろう』
突然目の前に現れたのは着物を着た狐耳の男
「だ、ダダダ誰だお前?!?!ていうか、どっから入ってきた!?」
『ずっとそばにいたんだがな。ただ呼んでくれなかったから姿を見せられなかっただけで』
「は?俺は別に呼んでなんか……」
まさか…まさか!!こいつか?!?!
「お前かぁぁ!!!ここ数日俺の睡眠時間を邪魔してたのはぁぁぁあ!!!!」
点と点が線でつながり、ここ最近の家鳴り騒動の元凶が目の前に出てきたと理解した
そんなの殴り掛からずにいられようか…いや、ない!!!
思い切り振りかぶって狐耳男に対して腕を振りおろす、がその身体をすり抜けて空を切った
「え?は?なんで?!」
『はっはっはっ、そう不思議そうにすることはないさ。実体がないのだから触れられなくて当たり前だ』
「実体が、ない?……やっぱ幽霊じゃねぇか!!」
『全く先ほどから許婚を幽霊、幽霊とひどいやつだ』
「知るか!!!ていうか許婚ってなんのことだよ!俺はそんな約束した覚えはないぞ!!」
『そうか…忘れたのか…もしやとは思ったが…しかし、一度交わした契りをそう易々と反故になどさせぬからな』
そう言って人差し指でおでこに触れられる
お前は触れんのかよ!!!ずるじゃねぇか!
トンと軽い衝撃のあとで脳内にとある風景が描写された
それはどこか懐かしい田舎の風景と神社の鳥居だった。縁日だろうか、広い境内には屋台が立ち並び人が行き来している。場面が社の奥の小さな祠のある場所へ移動していく、そこにはうずくまってなきじゃくる幼い少年。迷子だろうか、声をかけようとするがその前に他の手が少年の頭を撫でた。狐男だ。全く先ほどと変わらぬ姿で少年に話しかけている。しかし、なぜだろう。どこか懐かしい…
「もし、かして…」
あの少年は、俺?
『思いだしたか?』
指が離れ映像が途切れる
「お前、が、あの時の兄ちゃん?」
『ああ。そうだ。迷子になり不安で泣き喚いていた幼き日の許婚殿を慰め、家族のもとへと帰したのは間違いなくこの俺だ。そして、別れ際に』
「大きくなったら僕がひとりぼっちの兄ちゃんと結婚してあげる……と」
『そう、約束したのだ。だから迎えにきた』
「なる、ほどぉ…??」
だから、成人の誕生日を迎えた途端に……
「って納得できるかぁぁあ!!!オレオトコ!オマエモオトコ!ケッコンデキナイ!!」
『はっはっはっ。それは人間の世界での縛りの話だろう?そもそも俺たちは人間を基準になどしてはいないのだよ。魂が結ばれるのだから。性別など関係ない。それにそんな些細なこと関係なく孕ませることができるしな…』
おいおいおいおい!今さらっと恐ろしいこと言いやがったぞこいつ!!誰が孕むって?!?!
『まぁそういうことだからちかく迎えがくるだろう。身の回りの整理をして待っていてくれ』
では、と言って狐耳男は姿を消した
「マジでなんだってんだー?!?!」
家鳴りという不安が一つなくなったと思ったら次はそれよりも特大の悩み事が舞い込んできやがった。一体どうしろと…でも、逃げられないなら腹括るしかない、か
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