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11/19 オトギリソウ
花言葉 秘密 裏切り 迷信
弟切草 ある鷹匠の兄弟の話が元になっていると言われている
とある秘密をバラした弟を兄が斬り殺した…
「で、今俺は兄に殺されそうになってる、と」
俺の上に馬乗りになりナイフを腹に突き刺している男を見ながら呟く
「突然何言ってんの。気でも狂った?いや、元々か」
そう言いながらナイフの刃を少しずつ中に押し込んでくる
「ぐ…っ……あんま焦らすなよ」
「はっ、嫌だね。こうなるまで随分焦らされたんだからボクだって時間をかけてヤってやるさ」
口元を歪める兄。こうなったのには理由がある。言い訳っちゃ言い訳にしかならんのだけど、所属してた組織のとあるお外に出しちゃいけないオクスリをちょっと拝借したら命を狙われることになっちゃったんだよね。うまくやったと思ったんだけどなぁ。あ、でも、最終目的はとりあえず達成してるからいいか。
「なに?考え事?余裕だね。もうすぐ死んじゃうのにさぁ!あっはははは!ほら!痛い?痛いよねぇ?!」
ぐっと思いっきりナイフを捻って腹の中を掻き乱される。
「っ…がぁっ」
「ほら死ぬ前に懺悔でもしたら?少しはあの世での罪が軽くなるかもよ?」
「ぅぐあっ……はは…懺悔、ねぇ。そんなもんねぇよ。俺は自分のやりてぇことやったまでだ」
「やりたいこと…?やりたいことって?!
勝手に薬飲ませて、こうやって僕自身の手で弟を!家族を!殺させることだっていうの?!?!」
そう、俺は盗んだ薬をこの兄に投与したのだ。
俺たちはとある組織で暗殺者として育てられた元孤児だ。血は繋がっていないが苦楽を共にした兄弟のような絆がある、と俺は思っている。暗殺者なんていつも死と隣合わせなわけで、とある任務で死の蓋を彷徨っていた兄に組織が秘密裏に作っていた再生薬、いわゆる不老不死になるためのお薬らしい、の試作品の一つを盗んで飲ませた。
そしたら、あら不思議、兄は以前より元気になってめでたしめでたし!ってなるはずはなく
組織にバレたことで兄弟共に命を狙われることになりそうになったってわけ。流石にそれじゃリスキーなことしたのが馬鹿みたいになっちゃうから。全部俺が勝手にやったことで薬の投与は人体実験のつもりだったって言って組織から逃亡した。追っ手はくると思っていたけれど、クソ組織はその役目を兄に任せた。再生薬の実験の一環なのだとは思う。どこまで人間の能力を賦活できるのか……確かに、以前よりも人間離れした身体能力ではあった。しかし、どうやら、感情の起伏がどうもおかしくなるようだ。事実目の前の男はさっきから笑ったり泣いたり忙しい。おかげでナイフがあっちこっち動いて腹と内臓がズタボロだ。
「がはっ……でもまぁ、生きてくれてるならオールオッケー、かな」
だんだん力も入らなくなってきてるし、目も霞んできた。目の前の兄さんの顔もだんだんぼやけてよく見えない。泣いているんだろうか、ポタポタと生暖かい物が顔に落ちてくる。
「……泣くなよ。兄さん。ちゃんと、生きてくれよ。これが終わったら遠くへ逃げろ」
「…………」
「ほら、そろそろ、止め刺してくれ。流石にこの焦らしプレイは痛いすぎるわ。ぐっ……」
ナイフを握る兄の手に自分の手を添えて腹部から抜き左の胸部に持ってくる。
「……バカ。今更1人で生きろなんて…」
「大丈夫。新しい場所に行けば…俺なんかより…っ…いい人…いるから」
「あははははっなんだよそれ!!無責任なこというなよ!!」
バカバカバカバカと笑いながら泣きじゃくる
これじゃキリがない…
「がっは!!……げほっげほっ」
添えた手に力を込めて突き刺した。肉を裂く感触。脈を打つ臓器に刃先が触れる。これでいいんだ。俺がしがらみ全部持ってくから自由に生きて……幸せになれよ……
「あ………」
「…………」
「ああああああああああっ!!!!!!」
◇◇◇◇
「報告します。ターゲット被検体No.52の絶命を確認しました。」
「よし、これで馬鹿の始末は終わったな。処理したら被検体No.51を連れて帰還しろ」
「いや、それが……No.51がどこにも見当たらず…」
「なに?!?!ちっ逃げたか。まぁいい、あの薬を飲んだんだ。そう長くは持つまい、どこかでのたれ死んで終わり、ってとこだろう。」
「では、このまま放置で?」
「ああ、問題ない。それより、面倒にならないようさっさと死体を処理して帰ってこい」
「はっ!承知しました!!」
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