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11/29 ホトトギス

花言葉 永遠 秘めた思い 夕暮れに照らさされる帰り道 手を繋ぐ二つの影が並んで進んでいく 「俺たちはずっとずーっと親友だからな!なにがあっても一緒だ!」 「うん!ずっと一緒にいようね!」 子どもの頃は自分たちの知る世界の中だけで生きていけた だからこそ、ずっと一緒だ、なんて夢みたいな約束もできた 大人になって社会にでたらそんな子どもじみた約束忘れてしまうのに… 「はぁ…流石に残業続きは堪えるなぁ…」 太陽も落ち切って道を照らす灯りは街灯とキラキラした夜の街 あの頃と違って隣に並んで歩く人もいない 「あいつ、なにしてるんだろうなぁ」 中学を卒業した時に急に引っ越して行った親友 いや、元親友か。最初はお互いに連絡もしていたがそれぞれの生活が忙しくなって段々と連絡もまばらになり、社会人になった今はなんの音沙汰もない。 そういや、高校の時に連絡しようとしたら繋がらなかったんだっけか もしかしたら親友だなんて思ってたのはこっちだけだったのかもしれない それとも…俺が友達以上の気持ちを持ち始めてるのに気がついたのかもしれないな… まぁ今となっては一時の気の迷いだったんだろうなぁですませてしまっているけれど 突然こんなことを思い出したのもきっと疲れすぎてるせいだな… 「たまには、気分転換に飲みにでも行こうかな」 前に同僚に勧められた珍しいカクテルのあるバーに行ってみようか 確かこの前お店のURL送ってくれてたはずだ……あ、あったあった 「えーっと、お、結構近いな」 歩いてもそう時間のかからない場所だだだのでそのまま向かうことにした ✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎ 落ち着いた店構え いかにもおしゃれなお酒の出てきそうな店の扉を開けて中に入る 「いらっしゃいませ」 バーテンダーの男性がにこやかに迎え入れてくれる 店内は思った通りのおしゃれな空間でみんなが音楽を聴きながらゆったりとアルコールを嗜んでいた 「カウンター席でもよろしいですか?」 「あ、えっと、はい」 「こちらどうぞ」 バーテンダーさんの前、空いた席に案内される かしゃかしゃとカクテルを作っている姿は男の俺から見てもかっこいい 「お客様、ご来店は初めてですか?」 「はっはい。同僚に美味しいお酒が飲めるっておすすめされて」 「はははっ。それは嬉しいですね。お礼を言いたいのでよければ今度一緒に来てくださいね」 「はい!もちろんです」 立ち居振る舞いだけじゃなく言動までイケメンだ。 「っとすみません。お酒を楽しみに来ていただいているのにおしゃべりばかりで」 「いっいえ!そんなことは!こういったところは初めてなので……あ、おすすめのカクテルとかありますか?」 「そうですね。お客様、お好きなお酒はありますか?」 「あー…そうですね。甘いのがすき、ですかね」 「承知しました。あ、もしよろしければうちの見習いに任せてもいいでしょうか?腕は保証します」 正直お酒にはそんなに詳しくないからどんなのが出てきても美味しくいただけるだろう 「はい。お任せします。」 「ありがとうございます。あ、この一杯は初めてのお祝いにプレゼントさせていただきますね。呼んできますので少々お待ちください。……おーい………」 「なんすかマスター」 カウンターの奥の方で他の客と話していたバーテンダーが呼ばれてこちらにきた というか、この人店長さんだったのか。 「こちらのお客様に…」 「はいはー……い……??」 なぜかまじまじと顔を見つめられる 「…えっと、何かついてますか?」 「あっ!いや!なんでもないデス!えーっと甘いものがお好きなんでしたっけ?」 なぜか慌てているがなにかあったのだろうか。知り合いに似てた、とか?俺は見覚えない、よな? 「あ、はい!」 「では……ベルベットハンマーなんていかがでしょう。コーヒーリキュールの濃密な香りとブランデーの官能的な香りが特徴の甘口のカクテルです」 おお、なんか、よくわからないけど美味しそうだ 「それで、お願いします」 「承りました!お待ちくださいね!」 とても嬉しそうにカクテルを作り始めた。この仕事が好きなんだというのが見て取れる 出来上がったカクテルは琥珀色で言われた通りとてもいい香りのするものだった 一口含むと口の中にブランデーやコーヒー、あとはオレンジ?の味と香りが次々と広がっていく。生クリームがまろやかに全体をまとめていて… 「…美味しいっ!!」 「っしゃ!」 思いっきりガッツポーズをするバーテンダーさん 「????」 「あ……ごほん。すみません。なんでもないです」 「ぷっ…あははは!あーすみません。本当にお好きなんだなぁって」 「うえっ?!?!すっすすすすき?!?!」 「はい。この仕事、お好きなんですね」 「あ、仕事か………そう、ですね。仕事も好きですよ」 「いいですね…俺も仕事が好きだって言えたらなぁ…」 好きなことなら忙しくても充実していそうだし 「…?あんまり仕事好きじゃないんですか?」 「あーー……いや、忙しすぎて好きとかそういうの考えることもなかったなぁ…なんて」 「なら、辞めちまえばいいのに…」 「え?」 今なんかぼそっととんでもないこと言ったような 「あ、いや、なんでもナイデス。独り言なんできにしないでクダサイ。あ、でも、辛くなったらいつでもここにきてください。俺、待ってますから」 「は、はい。ありがとうございます??」 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ 「ありがとうございましたー」 先程まで目の前で美味しそうに自分の作ったお酒を飲んでいた男を見送り、一息つく 「お、さっきのお客さん帰ったんだな。美味しそうに飲んだもらえてよかったな……ってなんて顔してんだ。ニヤニヤして…そんなに嬉しかったのかよ。」 「マスター…俺、見つけちゃったみたい」 「は?何言ってんだ?」 「多分さっきの俺がずっと探してた人!!いや、多分じゃなくて絶対そうだ!!!すこし変わってたけど絶対そう!めっちゃ懐かしいいい匂いがした!!」 「……お前…いい匂いはきもいわ…」 「んへへ。また来てくれるかなぁ。今度来たら俺だって伝えてみようかな。へへ、へへへへ」 「こいつ、おかしくなっちまった…」 俺の大好きな人!今度は絶対離れないからな。前は親に邪魔されたけど、家出した今の俺にはもう関係ないしな! 「うへへへ。絶対捕まえてやるからな…」 「…やばい。罪を犯す前に出るとこ出るか」 〝ベルベットハンマー〟 カクテル言葉 今宵もあなたを思う

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