33 / 61

11/30 アツモリソウ

花言葉 君を忘れない 気まぐれ 「じゃあな。また来る」 「うん。また明日も待ってるね」 塀の上に登り遠ざかっていく姿を見つめる 自分の首に繋がれた鎖が恨めしい でもこれのおかげでオレはこの家で幸せに暮らせているんだけれど… 「これがなければ…」 彼の後を追いかけてどこまでも一緒にいけるのに 「ばーか。なに贅沢なこといってんだ。その鎖はお前が選ばれた証だろ。俺みたいに行く宛のないやつからしたら嫌味にしか聞こえねーっての」 「え?!なんでいるの?!」 いなくなったと思っていた彼が塀の上から声をかけてきた スタッと軽やかに飛び降りてくる 「いや、ちょっと忘れ物取りに来た」 「忘れ物?」 「そ。いつものしてなかったなって」 「あ!そう言えばそうだね!」 そう言って2人で鼻先をくっつけ合う なぜかわからないが彼は毎回さよならの時にこうしてから帰っていく 以前なんでか聞いた時に野良の命はいつ無くなってもおかしくないから毎回心残りのないようにって言ってたな そんなこと考えたくもないけれど… 「オレはずっと忘れずに待ってるからね」 「は?急になんだよ。つか、お前の軽い脳みそが忘れないようにこうやって毎日足運んでやってんだってーの」 「うん!そうだね!ありがとう!!」 「ふん。分かってりゃいいんだよ。ほんと感謝してほしいね」 ふんぞりかえっている彼も可愛くて素敵だと思う自分の意思で自由に生きてるって感じがして眩しい 「んじゃ、俺はいくからな。明日もいい子で待ってろよ」 「はーい!また明日ね!」 今度こそ去っていく彼の後ろ姿は機嫌が良さそうに尻尾が揺れていた

ともだちにシェアしよう!