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12/1 キク

花言葉 高貴 高尚 高潔 暗い部屋で光るモニターに映る眩い光景 キラキラと歌い踊りみんなを笑顔にしていく 彼から流れる汗でさえも綺麗な宝石に見える 俺はこの画面に映る男性アイドルグループにどっぷりハマっている その中でも1人、所謂推しメンの魅力に心を奪われてしまったのだ 「ふぅ…今日も俺の推しは尊い…」 いや、本当同じ人間だとは思えん まぁこんなジメジメした引きこもっている下等生物とステージ上で幸せを振り撒く天上の存在を同列に並べようとすること自体烏滸がましい 「さてさて、次はどれにしようかなぁ…」 ジリリリリリリ!!! コレクション棚の中から次にみるDVDを選ぼうと手を伸ばすがスマホからけたたましい音が鳴る 「……もうそんな時間か」 せっかくさっきまで天国の夢を見ていたのに、クソみたいな下界に労働に行かねばならない… 「いや、これも次の特典版のため!!推しが健やかに生活を送るため!!」 嫌だけど!非常に嫌だけど、微量でも推しが楽しく活動を続けていくための糧となれるなら!! 「………行く、かぁ」 とりあえず、通勤してる間に今日見たライブの感想を呟いておかないと この興奮をオタ仲間と共有しないわけにはいかない!! 「って、反応早?!あ、いつもの人だ。えっと………オレも同じやつ見てました。また感想語り合いましょう。お仕事頑張ってくださいね。………へへ。同志よ、ありがとう!」 オタク同士は惹かれ合うってやつかな。まさか同じ時に同じライブを見ていたとは。あとで推しの魅力を語り合わねば!! 「よし!推しと推し談義のために頑張るぞい!」 「うわぁ。オタクくんさぁ、ここ自宅じゃないんだからそういうのやめたほうがいいよ?」 肩を叩かれて振り撒くと同僚がいた こいつは俺とは正反対の陽の人間だ どうせ毎晩パーチーとかいってどんちゃんやってんだ… 「……いつからいた」 「えー?オタクくんがスマホ見ながらいやらしい笑いを浮かべてるところあたりから?」 「ちっ」 「うわ、舌打ち?オタクくん生意気ー」 そう言って肩を組んでこようとする 「寄るな、陽の気がうつる」 「なにそれ、陽の気だったら移った方がよくなーい?ほれほれ、もっとくっついてオタクくんも陽気にしてあげるーっ!!」 「おまっ!!よくない!!!!から近寄るなぁ!!!」

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