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12/7 ヒイラギ

花言葉 用心深い 保護 「ほーら、怖くないよー。大丈夫だからねー」 「ガルルルル!!」 「怖がらないでー。何もしないよー」 そっと手を伸ばすが威嚇されて近づかせてもらえない ここは孤児になった獣人の保護施設 人間の傲慢によって棲家や親を奪われたりした子もいる そりゃ警戒するのも仕方がない 家族として迎え入れたいなんてそんな甘言易々と信じられるような子達ばかりではないことも承知している 今俺が家族になりたいと思っているこの狼の獣人くんも人間が資源を得るために棲家と家族を焼かれここに保護された1人だ まだ幼いこの子から大切なものを奪ったやつらと同じ人間が、家族になろうなんておこがましいかもしれないが、奪ったのが人間だからこそ同じ人間である俺がこの子が得るはずだった幸せを返してあげたい 「グルルル…」 「……そうだよね。怖いよね。憎いよね」 伸ばした手を引っ込めて獣人くんの前に座り見つめ合う 相手は未だ警戒の目をこちらに向けている せっかくだし少しお話ししようか 「……ごめんね。本当の家族を奪っておいて、家族になろうなんて」 「………?」 「俺もね、1人なんだ」 威嚇が止んだ、どうやら話を聞いてくれるみたいだ 「……戦争って知ってるかな。人間同士でも自分たちの領地を広げるために争うんだよ。ほんと馬鹿げてるよね。負けた方は奴隷にされたり、ひどい時は皆殺しにするんだ」 「……なんで…同じ人間だろ?なんで殺す必要があるんだ?」 「んーなんで、かぁ。違う考えをもつ相手がこわいから、かなぁ。みんなが同じ方向を向いていないと不安なんだよ。きっとね」 「変なの、俺たちは違う耳や尻尾の種族とも一緒に暮らしていたぞ」 「そうだよね。俺たち人間は君たちと違って弱いんだ身体も、心もね。だから、違うものを拒むんだ。変だよね?」 「なら、なんでお前は俺に構うんだ。もしかして人間じゃないのか?」 きょとんとした顔で問いかけられる 「あっはは。どこからどうみても人間だよ。ただ、家族がいなくなった後に君と同じ狼の獣人に育てられたんだ」 「俺と、同じ…仲間……今!今もそいつと一緒にいるのか?!」 「ううん。もう死んじゃったんだ。でも、今はここにいるよ」 そう言って胸元にあるペンダントを見せる 「これは、その人の形見なんだ。これがある限りはいつも一緒、だと俺は思ってる」 「そうか……」 すごくしゅんとしてしまった…同じ種族が生きているという期待を裏切って申し訳ない。 「ごめんね」 「ううん。俺の方こそ…」 「気にしないで、もう過去のことだからさ。それよりもなんで君に構うか、だったよね」 いつの間にか隣にきて座ってくれていた彼がこくんと頷く 形見のペンダントを撫でながら話し始める 「俺の親、狼のお父さんの方なんだけどね。死ぬ間際に俺に家族を作れって言ったんだ。誰でもいいから大切にしたいと思う相手を見つけて家庭を築けって」 「それで、なんで俺なんだ?」 「君がね。とても似ているんだ」 「その、狼の親にか?」 「ううん。俺だよ。昔、故郷で本当の家族を殺されてっていったよね?その後1人逃げ延びた先で奴隷として収容されてたんだ。その時の俺は今の君みたいに周囲のことが信じられなくて何もかもを威嚇して拒絶してたんだ」 そんな時、無理やり俺の手を引いてくれたのが彼だった。奴隷からの解放、安全な家に温かいご飯、なによりも心が落ち着く相手。一度なくして、もう2度と手に入らないと思っていたものを与えてくれた。 「だから、同じような君のことを放っておけないんだ。俺がしてもらったように君にも家族のあたたかさをまた感じてほしい、幸せになってほしいって…ま、俺が1人じゃ寂しいって言うのもあるんだけどね。なんか、すごく自分勝手な理由でごめんね。でも」 「……わかった。お前についていく」 「え…いいの?」 「ああ。お前の家族になってやる。ただし、幸せになるのは俺だけじゃなくてお前と2人で、だからな」 出された手を取り握りしめる 「っ!うん!」 初めて笑った顔をみた、まだ施設に保護されるくらい幼いけれどなんだか彼の面影を感じる… 俺に似てるっていったけど、彼にも似ているような、懐かしい…つーっと温かい雫が目から溢れる 「なっ?なんで、泣いてるんだ?!どっか痛いのか?もしかして爪が刺さった?」 「ううん…ううん!なんでもないよ………これからよろしくね」 「おう。よろしくな」 ここから始まる2人の新しい家族の物語 これからどんな幸せが待っているのだろう 楽しみだなぁ

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