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12/8 ウィンターコスモス

花言葉 もう一度愛します 調和 真心 とある部屋のベッドの上に横たわる男性 ベッドサイドの椅子に座って見下ろす 「早く起きないかなぁ」 眠っている男の髪を撫でるとくすぐったかったのか少し反応があった 「うーん。反応するようにはなったけど、まだもう少し時間かかりそう」 この男がここに来てからもうすぐ数日が経過する 最初は何をしても反応がなく、死んでいるのかと思ったけれどかろうじて呼吸していることが確認できたから連れ帰って保護した それに… 「どこかで会ったことがあるような…なにか、大事なことを忘れているような」 そんな気がしてそのままにして置けなかったのだ 目を覚ましたらこの違和感について本人に聞いてみようと思う 「だから、早く起きてねー」 耳元で囁くが目ぼしい反応はない ✳︎✳︎✳︎✳︎ 数日が経ったある日、その時は突然訪れた。 その日もいつも通り身体を拭くための湯を準備するために部屋から離れたのだが、その間に目を覚ました男がベッドから上半身を起き上がらせていた。 「起きたんだね。おはよう。目覚めはどうかな?」 声をかけるとこちらを振り向いた 驚きからか目を見開いて俺のことを上から下まで確認し、ベッドから立ちあがろうとするがふらついた 「あーだめだよ。ずっと眠ってたんだ。筋肉も衰えてるだろうし急に立ったら危ないでしょ」 倒れそうになるのを受け止めてベッドに腰掛けさせる、が、何故か抱きしめられたまま離れようとしない。それに、なんでか分からないけど 「泣いてるの?」 「………っ」 彼の口から嗚咽が漏れているのに気がついて背中をトントンとあやす様に叩く きっと怖い思いをしたんだろう。 「よーしよーし。もう怖くないよー。ここは安全だからねー」 「…うっ……く…いき、て、る……っ」 「そうだよ。君は生きてるよ。ちゃんとこうやって目も覚ましたしね。大丈夫だよ」 死んでしまうかもしれないと思うくらいのことがあったのかと思うと自然と抱きしめる力が強くなる 「…よ、かったぁ……っ…」 何があったかは分からない。分からないけど、2度とそんな目には合わせたくないと思った。 初めて抱きしめたとは思えないこのしっくりとくる感じ、まるで最初から彼がここにいたかの様な不思議な感覚。そんな懐かしさを感じながら大丈夫だよと声をかけ続ける。 少し安心してくれたのか泣きじゃくる声が落ち着いてきた。 「ねぇ、君はどこからきたの?もしかして俺と会ったことがある?」 目を覚ましたら聞こうと思っていたこと。少し落ち着いた彼から離れて隣に座り聞いてみた 「…ん……すぅ………ぼくは、ここではない遠い世界から、あなたに会うためにきました」 「ほう?」 「なので、この世界であなたと会うのはこれが初めて、です」 「なる、ほど?いや、なるほどではないな。えっと、どう言うこと、かな……君は異世界から来た、と?」 不思議な発言に頭が混乱する。というか、この世界ではってことは他の世界ではあったことがあるってことなのだろうか 「そう、なりますね。正しく言うと並行世界、パラレルワールドから、ですね。始まりはきっとこの世界と同じだったけれど、何かの選択の違いで枝分かれしたもう一つのこの世界、という感じでしょうか」 元は同じ世界…枝分かれ…… 「うーん……理解できないけどなんとなくわかる気がするような。もしかして、その枝分かれの世界の影響で君に懐かしさを感じるのかな」 「かもしれません。本来ならお互いに干渉することはないのですが、稀にそう言うこともあるのかもしれない、です。これまであった何人ものあなたにはなかったことなので何とも言えないのですけれど…」 「何人もの俺と…??つまり君はその並行世界を渡っていろんな世界の俺に会ってきたってこと?」 「はい。それがぼくの目的ですから」 まっすぐ 「なんでそんなこと」 そういうと彼はまっすぐこちらを見て至極真面目な声色でこう言った 「あなたが、ぼくの愛する人が死なない世界を探すため、です」 「……?………はい?」 今なんて?俺が死なない世界?ってかつまり他の世界では俺は死んだってこと???あと、愛する人とは?! 「え、えーーーっと…俺って死んじゃうの?」 「いえ、それは……わかりません。他の世界線では…ぼくの目の前で……ですが!この世界のあなたは他とは少し違うのです。現にぼくに対して既視感があった。他の世界では全くの初対面という風な出会いでしたから」 「なる、ほど?つまりこれまでとちがうから死なない可能性がある、と?」 「はい。その通りです」 「あと、愛する人っていうのは」 そう、この発言もめちゃくちゃ引っかかっているのだ 「そのままの意味です。どの世界でもぼくはあなたのことを好きになるのです。何度引き離されようとも何度でも、何度でも愛します」 「そう、なのかぁ…」 そう言われて特になんの違和感もなくストンと胸の中に言葉が落ちていった。多分、つまりそういうことなのだろう。 ……一体この子は何人の俺の死を見てきたんだろう。よく狂わなかったな。俺なら好きな人の死を何回も見せつけられたら正気でいられないと思う。 「君は強いんだね」 そういうと彼は驚いた様に目を丸くして、そのあと首を横に振り肩を落とした。 「……いえ、強くなんてないです。あなたの死を受け入れられずこうやって禁忌に手を出してしまったのですから」 どうやら異世界に渡ることは禁忌の一つになっているらしい、しかし、それを犯してでも俺と2人で生きていく世界を求めたのだという 「やっぱり、強いと思うよ。そんなこといくら好きな人のためとは言えなかなかできるとは思えないしね」 「……っ!!あり、がとう……」 「とはいえ、僕は君のことまだ詳しく知らないんだ。またこの世界でも君を好きになるために協力してくれるかな」 「!!っ………うん!!あなたが望むなら!」 きっとこの世界で生きていくためには2人でいることが何よりも大切だと思うから 「これからよろしくね」

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