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12/9 プリムラ・オブコニカ
花言葉 しとやかな人 青春の美しさ
昼下がりの喫茶店
お店のテラス席に座るスーツを身に纏った2人の男性
服装は似ているのに表情は正反対で1人はニコニコと穏やかな笑みを浮かべ、もう1人は両手を足に置き姿勢をピンと伸ばして口元は硬く結ばれている
「ふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「はっひゃい!」
思いっきり舌を噛んだ男が痛みに表情を歪めた
この2人、別に初対面というわけではないのだ
おそらく近くの会社に勤めているサラリーマンなのだろう、お昼休みの時間になるとこの喫茶店にきてくれる。所謂常連さんなのである。だから、お互いのことはずっと前から認知していただろうし軽く挨拶をかわしているのを見たこともある。
まぁその度にガチガチに緊張している方の男性、(カフェラテを毎回頼んでくれるから以後ラテくんとしよう)が嬉しそうにしていたり、お互い違う席に座った後もちらちらともう1人(あの人はいつもブレンドのブラックだから以後クロさんとする)の方を盗み見ていたのも知っているのだけれど。
そしてついこの前、珍しく混雑していたときに席がなくテイクアウトして帰ろうとしたラテくんをクロさんが相席で良ければと誘ったのがきっかけで以降ああやって2人でお昼休みを過ごす様になったのだ。ラテくんからしてみたら憧れの人?に声をかけてもらってお茶友達になれたわけだが、挨拶だけでも気合を入れていたくらいだから面と向かって話すなんてまだまだ緊張して仕方ないんだろうと思う。クロさんはそんなこと知ってか知らずかそんなラテくんのことを面白がっているようだけれど。たまに会社の同僚さんと一緒に来る時と違って表情が柔らかく優しいしなにより楽しそうにしているのを見るにお互いに好意を持っていそうに感じる。
「いやぁ。いいねぇ。青春だねぇ」
「ちょっと店長手が止まってます。早く次のコーヒー淹れてください」
ついつい楽しくて2人を観察していたらオーダーを取って戻ってきたバイトくんに怒られてしまった
「あぁごめんごめん。すぐに淹れるね」
「はぁ、まったく…趣味に勤しむのもいいですけど、仕事はしてください」
「ハイ。申し訳ありません。気をつけます」
いやはや、しっかりしたバイトくんだ。いっそこの子にお店を任せて僕は趣味に集中させてもらっても
「店長?今、サボろうとか考えてたでしょう」
「あれ、バレちゃった?」
「バレバレです」
すぐ顔に出るんですからと言われる。そうだろうか、これでも接客業して長いから表情管理は得意なつもりなんだけどなぁ
「うーん。君の前だと気が緩んじゃうのかなぁ。なーんてね」
「なっ?!?!そ、それってどういう意味ですか」
あ、真っ赤になった。さっきまでキリッとした顔だったのに
「かわいいねぇ」
「っ!!このバカ店長!ふざけてないで仕事しろ!!」
「はーい。頑張りまーす」
扉が開いて新しいお客様が入ってくる
「いらっしゃいませー、お好きな席にどうぞ」
今日はお客様のどんな表情が見れるだろう
楽しみだなぁ
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