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12/19 スノーフレーク

花言葉 純粋 純潔 穢れなき心 「今年の供物でございます。生贄には穢れなき者を捧げます。どうか、どうか我々に豊穣の加護をお与えください」 祭壇に供物と生贄を並べて社に向かい祈りを捧げる人々 それを社の屋根の上から見下ろす 「いつ俺が穢れない男児を好むとか言ったかねぇ、別に人肉には興味ないし供えるならむしろもっと酒とか肴になるものの方がいいんだけど…」 まぁそんなことを言っても頭を地面に擦り付ける奴らには俺の姿は見えていないし声も聞こえてはいない 信仰は神の力の源であるから信仰してくれるのはいいことだがまさか邪神だとか思われてないだろうな… 頭を悩ませていると和装を見に纏った男が隣に来て腰掛けた 「貴方がわたしを娶ったのが全ての元凶では?」 「う゛…だって一目惚れだったんだもん。あ、こいつ俺の嫁にする!って目があった時に直感がそう言ったんだもん」 そう今隣に座ったのは俺の伴侶で元々は今捧げられている生贄と同じ様にここに供えられた人間の1人である こいつが生贄にされるまでも女を生贄にされたことがあったが全て村に追い返していたのだが、もしや、神は男色なのではとか言い出した頭のおかしい村の老人が初めて供物としてまだ歳若かったこいつを生贄に選定したのだ いや、別に男色ではないんだ。決してそういうわけではなかったのだ。ていうか、そういうものに全く興味などなかったのだが、こいつと目があってにこりと笑いかけられた時に全部持っていかれたよね そもそも俺が許可を与えた者以外は俺の姿を認識すらできないはずなのにこいつは最初から俺のことをしっかりとその瞳に映していたのだ なぜ見えていたのかは知らないがきっと 「最初から運命で決まってんだ。神の思し召しで俺とお前は伴侶になると」 「神を名乗る貴方がそれをいうのはどうなんですか」 「俺なんか末端の末端の席にいるだけだから、もっと偉い神がさ」 「そういうものなんですか?」 「そういうものなんだよ」 そういうことにして俺はこいつを自分のいる空間へと隠した 人の世と隔てられた神の住まう隠り世に 随分とこちらの物を食べたこいつももう人の世の理から外れているだろう 人間ではなくなるわけだからちゃんと同意は取ったよ?いや、まぁ、結構口説き落とす感じだったとは思うけど それで、その当時のこいつがまだ精通もしていないほどの〝穢れない男児〟だったのが原因でそれ以降俺はそういう神だと思われているらしい 自分の理の中に招き入れるわけだからそう易々とどうでもいい奴を受け入れるわけにもいかないのだ。だから、こうやって供えられた人間の生贄は山向かいの離れた村へ記憶を少し弄り連れていく様にしている 「今回もいつもの様になさるのですか?」 「ん?ああ、そうだな。また山向かいの村へ置いていくよ」 「そう、ですか」 いつも通りの返事をすると隣でほっと息をつくのが目に入った 「おや?今ホッとした?もしかして俺に捨てられるとか思った?」 「はぁ?そんなわけないでしょう。むしろもしもの時は貴方の方が捨てられる側です」 「ええ?!なんで?!」 「なんでもなにも仕事もせず暇さえあれば酒盛りをしようとするような旦那なんて普通愛想尽かされない方がおかしいですからね」 「そ、そんなに常に飲んでるわけじゃ…それにちゃんと豊作になる様に神としての仕事もしてるもん」 「その仕事も年数回ですよね」 「うぐぅ…で、でも」 俺の元ですくすくと成長した伴侶は俺に対して厳しく育ったようだ 愛情をたくさん注いだつもりなのだが、容赦ない 「まぁわたしくらいしか貴方の相手なんてできないでしょうから、他に目移りとかしないようにしてくださいね」 「あ、はい」 あの時と同じ様に笑いかけられてぼっと顔が赤くなる 俺の伴侶はいつまでもこいつ1人だろうと確信した

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