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12/20 ピンクのアルストロメリア

花言葉 気配り 「はい、よければお茶、どうぞ」 にっこりと笑って目の前に座る2人の男に湯呑みを差し出す 「あ、あの…ありがとう、ございます」 椅子の上で小さくかしこまっている男の子がおずおずと湯呑みに手を伸ばす 「いえいえ、うちの馬鹿がいつも迷惑かけてるだろうから。これくらいのもてなしはさせていただかないと。ねぇ?」 そういってその子の隣にすわってこちらを睨んでいる我が愚息へ問いかける 「ちっ…俺に聞くなよ」 「ちょっと、親御さんに向かって、そんな態度とっちゃダメでしょ。反抗期なんてとっくに過ぎてるだろ」 「……ふん」 男の子に咎められそっぽを向く素振りを見せる愚息 だが反論しないあたり随分と手懐けられているらしい 「そうだ、お茶だけじゃ口寂しいかな。何かお茶菓子とってこようね」 「そんな、お気遣いなく」 「いいのいいの、せっかく来てくれたんだから気にしないでゆったりしててね」 「あ、お手伝いします」 そう言って立ち上がりついてくる。なんとも良い子だ。うちの愚息が隣に座っていられるのが謎すぎるほどに 立ち上がり茶菓子のお煎餅を棚から出しお皿に盛るとテーブルへ運んでくれた 「ってか、呼び出したのは茶ぁするためじゃねぇんだろ。とっとと用件言えや」 出された煎餅をバリバリと食べながら話を急かしてくる 「こら、食べながら喋るな行儀悪いぞ」 そう言われて話すのをやめて煎餅を飲み込んだ 「……わぁったよ…」 ほう…素直に従った 「おやおやまぁまぁこれはこれは」 そんな2人を見て感心しているとはっとした様子でこちらを睨みつけ顔を真っ赤にする我が息子 「っ!!!なっんだよ!ニヤニヤすんな!クソオヤジ!!」 「はははは!そんな言葉遣いしてるとまた大好きな彼氏くんに注意されるよー?」 「ちっ!!!」 「かれ?!いや!!あっあの!オレはそんなのでは!」 彼氏という単語に反応を示す男の子 「ふふふ、隠さなくても大丈夫だよ」 「つか見られてるんだから今更隠せるわけねぇだろ」 「っ……で、でも…………いや、それもそうか…」 僕が留守にしている間にリビングで事に至ったのであろう証拠を見つけたのだから 帰宅を察知して急いで部屋に戻ったのだろうけれど… まぁうちは男の1人親だし黙っていてもよかったが。もしこれがお相手のお家で起こったりしたら…一大事になるだろうし注意喚起をしようと思って……っていうのと愚息の相手がどんな子か見てみたかったってのも大いにある 「そうそう、こんなモノ見ちゃったらね。ふふ、わかいっていいねぇ」 「っ!」 ニヤニヤと笑いながら先ほど見つけた事後の証拠物品を指差すと2人とも顔が真っ赤になる 「クソオヤジ!!てめぇ!それとっとと捨てろ!」 「えー?お前が捨て忘れたんだろー?うちだから良かったけど、相手のお家ではリビングで盛らない様にねー?あと証拠はちゃんと消しとかないと」 外して縛ってポイしたんだろうけど捨てるならゴミ箱の奥に押し込むならなんなりしないと リビングのゴミ箱の一番上にポンと置いてあったら嫌でも目につく 「あ、あの……すみません…」 「いやいや、むしろうちの馬鹿の後始末がお粗末で申し訳ない」 「いえ……その…それオレの、せい、です」 「……………?」 真っ赤になって俯く男の子に首を傾げる そのまま息子の方を向くとこちらもこちらで真っ赤になっていた もしや、僕が想定していたのと逆なのか? 「………ほう?なるほど?」 「なるほどってなんだよ!!!」 「そうかそうかー。いやー勘違いしてたみたいだね。そっかそっかぁ」 「……ほんとすみません…」 「いえいえ。ただうち以外ではやらかさない様にね?」 「はっはい!!」 大きな声で返事が返ってくる 「ふふふ、本当にいい子だねぇ。 馬鹿な息子ですがどうぞ末永く面倒見てやってください」 「おい!馬鹿ってなんだよ!」 「こっ!こちらこそよろしくお願いします!」 「いやぁ、立派な息子が増えて僕は嬉しいよー」 「む、息子?!」 「てめぇは気がはええんだよ!」 いやはや、なんともこれから賑やかになりそうだ

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