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雪虫4 2
震えながらずるずるとへたり込むと無意識にぎゅっと膝を抱え込む。
これが少しでも自分を小さくしてあのαから見つからないようにするための動作じゃないか と気づいたのは、戻ってきた瀬能に隠れてるの? と尋ねかけられたからだった。
Ωがαの子供を産むと、親のαの能力をそのまま引き継ぐαが産まれる……らしいと言うのは、いつか瀬能が眉唾だよーと言いつつ教えてくれた話だったけれど、代々Ωを王妃として迎え入れてきたルチャザ王国の国王がああなのだとしたら……
「眉唾って話じゃないのかもしれない」
ぽつんと呟き、αの子供をΩが生み続けた結果産まれる存在の行き着く先は と言うところまで考え、ぶるぶると首を振った。
オレが考えたところで答えの出る問題じゃない。
「しずる?」
きょとんと問いかけるように呼ばれて、「ん?」って返事をする。
そんな埒のあかない疑問よりも、目の前の番だ。
番。
軽く首を傾げるたびにちらちらと見える項の噛み痕に、ついデレ と顔が緩む。
小さく、華奢で、銀に近い金髪と冬の青さを感じさせる澄んだ瞳を持つオレの番、雪虫。
ちょっと力を込めてしまうと折れてしまうんじゃって思うくらい儚いΩでもある雪虫は……
「よそ見するなんて信じられない!」
ぷくっと頬を膨らましてお怒り中だ。
「ごめんって! 別によそ見してたんじゃなくて、ちょっと気になることがあって……」
「それをよそ見って言うんだよ!」
そう言うと桃のように柔らかな丸みを見せる頬をさらに丸くしてみせるから、ついつついてぷしゅっと空気を抜いた。
「うんー……まったく関係ないわけでもないんだけどさ」
「?」
オレと雪虫が番になったのだし、その先を考えるとやっぱり子供の話とか出てくるかなぁって思うと、さっきまで考えていたことは別に関係のない話じゃない。
とは言え……子供のことなんて考えてはないんだけどさ。
「雪虫、機嫌治してこっち来て」
さっと手を広げるとその中に飛び込んできてくれて、それだけでオレは天国にだって行けちゃうくらい幸せなんだけど……でも、腕の中の体がまた軽くなったのかもって思うと笑っていられなくなる。
日の光ですら耐えられない、ほんのちょっとしたことで熱を出して寝込んでしまう、元々体が丈夫じゃない雪虫は自分の命を支えるだけで精一杯だ。
自分の子供 と言うものを想像したことがなかったと言うわけじゃなかったけれど、両親に恵まれなかったせいで普通の子供とは違う生き方をしてきたオレには雪虫と子供との幸せな生活のイメージと言うのがわからない。
だから、憧憬もなくって……
イメージできない子供と雪虫とを秤にかける気はさらさらない。
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