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雪虫4 6

「君は忙しくないの?」  にや と含むような表情で言われて、ここにめちゃくちゃ早く来た理由に飛び上がった。 「あ! それじゃあ!」 「ああ、またね」  手を振るのもそこそこに玄関に飛び込んで……受付をする間をもどかしく思いながらすぐに雪虫の部屋に行きたいのをぐっとこらえて瀬能の部屋へと顔を出す。 「 ────瀬能先生、おはようございます」  遠慮がちなノックをしてそろりと小さな声を出しつつ瀬能の個室の扉を開く。  わずかに開けたところで頭を突っ込んで見てみると、椅子にもたれかかった瀬能がギシギシと体を揺らしているところだった。  アイマスクをしているわけではないので眠っていると言うわけではないようだけれど、目は閉じられたままだ。 「  おはよう」  声はくたびれている。  白衣の下のシャツが昨日のままで……帰りもしなければ休みもしなかったのかとぱちりと目を瞬かせる。  年が年なんだからせめて仮眠くらいはしないと…… 「いや、仮眠をしようと思ったんだよ?」 「何も言ってないじゃないですか」 「あ、そう? 人を年寄り扱いしてるような気がしたんだけどね」  そう言うと眠そうにあくびを噛み殺しながら肩を回す。  白髪も年相応の皺もあって、オレからしてみたら瀬能はおじいちゃんと呼ぶには失礼だし、だからって親世代って言うには年上すぎると言う微妙な年齢だと思う。  体つきががっしりしているし、無駄に若作りしているわけじゃないから年寄りには見えないけれど、それでもずいぶんと年長者なのは変わらない。 「まぁ、大神くんも帰ったし、これからちょっと休むよ」 「え? もう帰ったんですか?」 「え?」 「え?」  きょとんとお互いに顔を見合わせる。 「あの二人ならまた入って行きましたけど?」 「え⁉ また⁉」  あげられる声はちょっと大げさなほど嘆いているように聞こえる。 「もう! ちょっと注意してくるよ」 「あああ! 何かしておくことありますか?」 「君、それを聞いて僕が一日仕事を頼んだらどうするの?」  そんなもの決まってる!   「サボります」  はきっと答えるオレに瀬能は疲れたように肩を落とす。 「でしょ? こう言う時はこっちに顔出さなくていいから、雪虫のところに行ってあげるといいよ」 「じゃあ今度からは遠慮なく!」  間髪入れずに返すオレに苦笑する瀬能に頭を下げて、オレは今度こそオレの番が待っている部屋へと走り出した。  は と息を扉の前で整えている最中に、ふと自分が汗臭いんじゃないだろうか? と言うことに気づいて慌てて体を見下ろす。  

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