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雪虫4 7

 頓着がないせいでいつも通りのシャツとパンツ、リュック姿で……  毎日着ているものだから少しくたっとしているその様子は、なんだか今日の雪虫の発情期にふさわしくないように思えてしまう。  どうせなら新しい服を買って、汗臭くならないようにタクシーか何かで来るべきだった。  二人で過ごすことばっかりに夢中になっていて、自分のことに気をやれなかったことに眩暈がしそうだ。  すぐそこの扉のわずかな隙間から雪虫のフェロモンが香ってきていると言うのに、オレは急に恥ずかしくなって動けなくなった。  ダサいと思われるだろうか?  臭いと思われるだろうか?  それとも、こんなこともスマートにできないαだって思われるだろうか?  ぎゅっとシャツを掴んでしまったせいで皺まで寄って……入るのが怖くてたまらない。  なのに入りたくてたまらない。 「いい……匂いがする」  元々フェロモンの匂いのほとんどしない雪虫だったけれど、さすがに発情期には匂いが少し濃くなるらしい。  とは言え……番になる前は、オレが発情期に気づかないほどのフェロモン量しかなかったから、濃くなったとは言っても他のΩに比べたらわずかだ。  その匂いを受け取れる能力があって、本当に良かった。  そうでなければ雪虫の番になんてなれてなかっただろうから。 「  ──── しずる?」  扉の向こうから聞こえたくぐもった声にはっと体が跳ねる。 「雪虫! ……お、はよ  」 「おはよう! ……あれ? はいってこないの?」  雪虫の部屋の扉は内側からは開けることができない造りになっている。  もちろん、ここから一歩も外に出てはいけない と言う話ではなくて、不審者がそれっぽいことを言って雪虫から扉を開けさせるのを防ぐためだ。  この扉は、外からなら登録された人間の静脈と網膜と、入館の際に渡される手首のタグを使えば開けられる。  だからオレは順番を守ってその三つを扉に読み込ませて……カチ と鍵の外れる音がした途端、戸が開いて満面の笑みの雪虫が顔をのぞかせた。  まるで暴力のようにぶわりとフェロモンの香りが溢れて、もし雪虫が番でなかったらヒートテロかと思ってしまうくらい濃密で甘い匂いだった。  息を吸いたいのに、固形物しかないような錯覚に陥るほど、発情フェロモンの存在はオレをめちゃくちゃに襲う。 「 っ、あ、ぁ、────っ 」  少しでも正気を保つようにと、瀬能から特別に処方された薬まで飲んでいると言うのに、オレは今すぐにでも雪虫を押し倒して……それこそベッドとかじゃなく、床でもなんでもいいから……そんなところに押し付けて、服を割いて甘い蜜を垂らす秘部を嘗め回し、犯したい衝動に駆られた。

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